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天狐あやかし秘譚
第3章 【第2話 獄門骸骨】夢幻泡影(むげんほうよう)
☆☆☆
私はとある地方都市の出身だ。

お姉ちゃんは超優秀だった。地元高校で、唯一京都大学に入学するだけの学力があり、かつ、美人。才色兼備とはよく言ったものだ。
男も選び放題だったのだろう。しょっちゅう違う彼氏を連れていたように思う。

そのまま、丸の内の商社にお務め遊ばされ、今はイギリスで活躍していると聞いている。

弟もこれまた優秀。こっちは主にフィジカル面だ。小学校の頃からサッカーをやっており、その実力はメキメキ上昇。高校はサッカー推薦で入った。インターハイではチームを久しぶりの優勝に導くなど目覚ましく活躍していた。

今はプロチームに所属しており、こちらも海外遠征中だ。

姉の私がいうのも何だが、ルックスもいい。運動できて、ルックスいい男子・・・。モテないわけがない。

「また、告白されちゃったよ」

小中高を通じて、彼から何度このセリフを聞いたかわからない。

私は・・・。至って普通だと思う。可もなく不可もない。ただ、どうしても上下が輝きすぎているので、くすんで見えてしまっている自覚はあった。

両親も可能な限り私達を平等に、平等に、としてくれているのは分かっていたが、上や下が褒めることが多すぎて、私を褒めるのはかなり無理をしているのが見え見えだった。

そんな人生だったので、私は酷く、自信がない。
どうせ、私は・・・みたいな根性がどこか染み付いているように思う。

そして、両親の前では姉や弟との扱いの違いを気にしていないふりを、
お姉ちゃんの前では嫉妬していないふりを、
弟の前では無邪気な彼の発言に動揺していないふりを、

ずっと・・・自分を偽ってきた。

なので、疲れると、誰の目にもつきたくなくなってしまい、地元のだだっ広い公園に来て、こうしてぼーっと座っていることが多かった。こういうときはなんだか『自分』に戻れる気がした。

ただ、寂しさが尋常じゃなかった。

私だって、高校時代、彼氏の一人や二人、できそうになったことがあったが、結局進展はしなかった。今振り返ると、私に自信がなかったからだと思う。

大学は東京に出てきて、ひとり暮らし。上も下もすでに自力で稼いでいるので、私だけ迷惑かけるのはと思い、可能な限り実家に負担にならないよう、アルバイトと学業に専念した。お陰で、恋する暇もなかった。

そして、就職・・・クビ・・・今に至る。
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