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天狐あやかし秘譚
第26章 往古来今(おうこらいこん)

ひび割れた空間が、私の周囲でたちまちにして別の形に再構成される。
今度は・・・どこか立派なお屋敷の中だ。長者と言われるような人はこういうところに住んでいるのかもしれない。目の前の襖の向こうはいくつかの蝋燭が燭台に立てられていて、薄ぼんやりと明るくなっている。外の様子は分からないが、この暗さからいって夜なのだろう。
先程の場面より、更に底冷えするような寒さになっているところを見ると、真冬に近くなっているのかもしれない。私は自分の体を手でこすりながら、寒さに震えていた。
襖の向こう、誰かがいるようだった。
声が聞こえる。男の人が一人・・・?それから、先程の女の声・・・、海子の姉の声のようだった。
男の人が海子の姉を説得しているように聞こえる。
「このヒレは、当家の家宝。神宝と言い伝えられています。願いを叶える力を持つものです」
「そのように都合の良いものであれば、そなたが使えばよいではないか」
はは・・・と男が薄く笑う。
「このヒレは神宝が故に、強い力を持つ選ばれたもののみが使えるのです。ちょうど、貴方様のような、美しく、強いものだけです。そして、一度身につければ、その生命が尽きるまでその身から引き離すことができなくなる・・・これはお含みいただきたい」
女が息を呑む様子が分かる。そっと覗くと、男性の顔のみが分かる。どこか、圭介を思わせるような怜悧で冷たい印象のある男だった。
今度は・・・どこか立派なお屋敷の中だ。長者と言われるような人はこういうところに住んでいるのかもしれない。目の前の襖の向こうはいくつかの蝋燭が燭台に立てられていて、薄ぼんやりと明るくなっている。外の様子は分からないが、この暗さからいって夜なのだろう。
先程の場面より、更に底冷えするような寒さになっているところを見ると、真冬に近くなっているのかもしれない。私は自分の体を手でこすりながら、寒さに震えていた。
襖の向こう、誰かがいるようだった。
声が聞こえる。男の人が一人・・・?それから、先程の女の声・・・、海子の姉の声のようだった。
男の人が海子の姉を説得しているように聞こえる。
「このヒレは、当家の家宝。神宝と言い伝えられています。願いを叶える力を持つものです」
「そのように都合の良いものであれば、そなたが使えばよいではないか」
はは・・・と男が薄く笑う。
「このヒレは神宝が故に、強い力を持つ選ばれたもののみが使えるのです。ちょうど、貴方様のような、美しく、強いものだけです。そして、一度身につければ、その生命が尽きるまでその身から引き離すことができなくなる・・・これはお含みいただきたい」
女が息を呑む様子が分かる。そっと覗くと、男性の顔のみが分かる。どこか、圭介を思わせるような怜悧で冷たい印象のある男だった。

