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天狐あやかし秘譚
第3章 【第2話 狂骨】夢幻泡影(むげんほうよう)

☆☆☆
ここはどこだろう?
暗いところだった。だんだん目が慣れて来ると、どうやら、家の中にいるみたいだと分かった。
どこにでもあるような普通の住宅のい廊下にいた。右手には階段、背面は玄関だろうか?三和土がある。
正面に扉がある。おそらくその向こうはリビングのような造りだろう。
バシン!バシン!
奥の扉の向こうから何かを叩いているような音が聞こえた。
バシン!バシン!
その音とともに、うっ、うっ、という短いくぐもった声も聞こえる。
私はそっと扉に近寄り、細く開く。
まるで影のような男性が立っていた。それは竹刀のようなものを振りかぶっている。
先程からの音はこの竹刀が、男性の足元にある何かに振り下ろされている音だった。
バシン!バシン!
うーっ・・・うっ!
ダイニングテーブルが邪魔でよく見えない。私は机を回り込んで行こうとする。不思議と人の家に勝手に入って怒られるんじゃないかとか、この状況が恐ろしいとか、そういうことは感じなかった。ただ、何が起こっているのか、見なければ、という思いだけがあった。
机を回り込んだ私の目が大きく見開かれる。
そこには子供がうずくまっていた。
4〜5歳くらいの女の子が、亀のように丸くなっている。口を両手で必死に抑えて、声を上げないようにしている。
竹刀が、背中に振り下ろされるたびに、その子は痛々しく目を見開き、口をぎゅっと押さえる。
止めるべきなのに、声が出なかった。足が地面に張り付いたようになり、身動きすらできない。影のような男が竹刀を振り下ろし続けるのを、私は立ち尽くして見ていることしかできなかった。
ぐにゃり・・・と世界が歪む。まるで世界が一度水に溶けたようにぐちゃぐちゃに混ざっていく。しばらくすると、また世界が再構成される。
ここはどこだろう?
暗いところだった。だんだん目が慣れて来ると、どうやら、家の中にいるみたいだと分かった。
どこにでもあるような普通の住宅のい廊下にいた。右手には階段、背面は玄関だろうか?三和土がある。
正面に扉がある。おそらくその向こうはリビングのような造りだろう。
バシン!バシン!
奥の扉の向こうから何かを叩いているような音が聞こえた。
バシン!バシン!
その音とともに、うっ、うっ、という短いくぐもった声も聞こえる。
私はそっと扉に近寄り、細く開く。
まるで影のような男性が立っていた。それは竹刀のようなものを振りかぶっている。
先程からの音はこの竹刀が、男性の足元にある何かに振り下ろされている音だった。
バシン!バシン!
うーっ・・・うっ!
ダイニングテーブルが邪魔でよく見えない。私は机を回り込んで行こうとする。不思議と人の家に勝手に入って怒られるんじゃないかとか、この状況が恐ろしいとか、そういうことは感じなかった。ただ、何が起こっているのか、見なければ、という思いだけがあった。
机を回り込んだ私の目が大きく見開かれる。
そこには子供がうずくまっていた。
4〜5歳くらいの女の子が、亀のように丸くなっている。口を両手で必死に抑えて、声を上げないようにしている。
竹刀が、背中に振り下ろされるたびに、その子は痛々しく目を見開き、口をぎゅっと押さえる。
止めるべきなのに、声が出なかった。足が地面に張り付いたようになり、身動きすらできない。影のような男が竹刀を振り下ろし続けるのを、私は立ち尽くして見ていることしかできなかった。
ぐにゃり・・・と世界が歪む。まるで世界が一度水に溶けたようにぐちゃぐちゃに混ざっていく。しばらくすると、また世界が再構成される。

