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天狐あやかし秘譚
第41章 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)

♡ーーーーー♡
【狂瀾怒濤】ひどく乱れて手の施しようのないさま。
形勢を一気に逆転する、怒涛の大波・・・みたいな。
♡ーーーーー♡
「お・・・とうさん!」
白のニットにスカートという、全身白コーデで身を包んだ少女が、壮年の男性に手を引かれ、日が傾きかけた村を走っていた。
「どこにいく気なの?」
少女の肌は抜けるように白く、漆黒の髪とのコントラストが彼女の美しさをより引き立てていた。
「この村から逃げる・・・」
お父さん、と呼ばれたのは、名越鉄研である。そして、この女性は名越真白。彼の実の娘であった。
「ダメ!」
真白が父の手を振り払う。鉄研はなおも真白の手を引こうとするが、再び振り払われてしまった。
「真白!言うことを聞きなさい!」
「お父さんこそ!わ・・・私が外に出たら・・・だって・・・」
真白は怯えたような目で鉄研を見つめた。ゆっくりと首を振り、後ずさる。
「ダメよ・・・戻らなきゃ・・・」
「真白!」
鉄研が声を荒げる。何としても連れて逃げなければいけない。その一心だ。
さもなくば、陰陽師が来て、真白を・・・真白を・・・
殺してしまうから。
「親父殿・・・そりゃ悪手だぜ」
後ろから声がした。その声には覚えがあった。先日、『お前の命と村人の命、どっちかを選べ』と言った人物・・・顔の半分が醜く爛れた黒衣の男。
そして・・・
鉄研はゆっくりと振り返る。
「まだいたのか、颯馬・・・」
「兄様!!」
颯馬と呼ばれた男に真白が駆け寄ろうとするのを、鉄研が手で制した。
「近づくな!・・・あいつは裏切り者だ」
その言葉を受け、颯馬はひょいと肩を竦めるような仕草をする。
「やれやれ・・・随分な言われようだね・・・。俺もあんたの息子なんだけど?」
そして、手に持った白い布のようなものを鉄研の足元に投げてよこした。
「忘れ物だぜ?親父殿・・・。可愛い娘を助けたきゃ、それを身に着けて願うしかねえよな?一族の秘宝・・・霊妙長寿の宝玉『足玉』を・・・。そいつを・・・その、品々物之比礼を使えば、効果は若干落ちるが、足玉・・・のようなものは作り出せるぜ?」
足元の領巾を鉄研が見つめる。
【狂瀾怒濤】ひどく乱れて手の施しようのないさま。
形勢を一気に逆転する、怒涛の大波・・・みたいな。
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「お・・・とうさん!」
白のニットにスカートという、全身白コーデで身を包んだ少女が、壮年の男性に手を引かれ、日が傾きかけた村を走っていた。
「どこにいく気なの?」
少女の肌は抜けるように白く、漆黒の髪とのコントラストが彼女の美しさをより引き立てていた。
「この村から逃げる・・・」
お父さん、と呼ばれたのは、名越鉄研である。そして、この女性は名越真白。彼の実の娘であった。
「ダメ!」
真白が父の手を振り払う。鉄研はなおも真白の手を引こうとするが、再び振り払われてしまった。
「真白!言うことを聞きなさい!」
「お父さんこそ!わ・・・私が外に出たら・・・だって・・・」
真白は怯えたような目で鉄研を見つめた。ゆっくりと首を振り、後ずさる。
「ダメよ・・・戻らなきゃ・・・」
「真白!」
鉄研が声を荒げる。何としても連れて逃げなければいけない。その一心だ。
さもなくば、陰陽師が来て、真白を・・・真白を・・・
殺してしまうから。
「親父殿・・・そりゃ悪手だぜ」
後ろから声がした。その声には覚えがあった。先日、『お前の命と村人の命、どっちかを選べ』と言った人物・・・顔の半分が醜く爛れた黒衣の男。
そして・・・
鉄研はゆっくりと振り返る。
「まだいたのか、颯馬・・・」
「兄様!!」
颯馬と呼ばれた男に真白が駆け寄ろうとするのを、鉄研が手で制した。
「近づくな!・・・あいつは裏切り者だ」
その言葉を受け、颯馬はひょいと肩を竦めるような仕草をする。
「やれやれ・・・随分な言われようだね・・・。俺もあんたの息子なんだけど?」
そして、手に持った白い布のようなものを鉄研の足元に投げてよこした。
「忘れ物だぜ?親父殿・・・。可愛い娘を助けたきゃ、それを身に着けて願うしかねえよな?一族の秘宝・・・霊妙長寿の宝玉『足玉』を・・・。そいつを・・・その、品々物之比礼を使えば、効果は若干落ちるが、足玉・・・のようなものは作り出せるぜ?」
足元の領巾を鉄研が見つめる。

