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天狐あやかし秘譚
第4章 霖雨蒼生(りんうそうせい)
ダリが横目でこっちを見る。なんか流し目で見つめられたような気がして、それだけでドキンとする。キュッと胸の前で合わせた手に力が入る。

「主、その装束も麗しいな・・・」
テレビを消し、ふわっと姿を消すと、私の目の前に突如現れる。
急に妖力を行使した移動をされ、間近に現れたダリにドギマギし、目をそらしてしまう。
ち・・・近い・・・。

ダリが顔を寄せてくる。先程飲んでいた日本酒のせいだろうか、かすかに甘い匂いがする。これって、これって・・・・。

後退り、寝室に使っている部屋との間の引き戸に押し付けられるようになり、思わずギュッと目をつぶってしまう。

ダリが更に顔を近づけてきた気配・・・、吐息が顔にかかるほどの距離。

「随分・・・物欲しそうな顔をしておるな」
きゃー・・・ば・・・バレてる・・・。
「口づけ・・・今の者たちは『キス』というのか?・・・誘うておるようじゃよ」
さ・・・誘ってなんか・・・。でも、もしかしたらダリが迫ってきた時、『キスされちゃうかも』って思って、その時、唇が・・・そんな形になってしまっていた・・・かも?

ふふふ、とダリが笑う。

そっと目を開けると、目の前にダリの顔があり、またどきりとして目をつぶってしまった。
どうしよう・・・え?これ・・・どうしたらいいの!?

ダリがそっと私の腰に手を回してくる。
「主は・・・とても、可愛らしい・・・そして・・・」
そこで、言葉を切る。え?可愛らしくて・・・何?何?

もうダメだ、心臓がはち切れそうにバクバクしている。
腰に触れているダリの手はもちろん、密着せんばかりになっている身体にも鼓動が伝わっちゃうよ。

「口づけ・・・するか?」

お腹の中がムズムズする。東北での甘いキスを思い出してしまっている。
ほしい、と一言、言えば、きっとしてくれる。
で・・・でも、でも・・・
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