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天狐あやかし秘譚
第41章 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)

「綾音!」
狐が離れたところにいた女陰陽師のものと思しき名を叫ぶ。爆発的な音がしたかと思うと、俺の後ろで虫たちが弾け飛び、一瞬の内に移動した狐が女陰陽師の前に降り立ち、槍を振るう。槍の力だろうか、そのたった一薙で数千の虫たちがきれいに消し飛ぶ。
どうやらあの「綾音」という術者が狐のアキレス腱のようだ。使役者なのかもしれない。
ならば・・・!
「シラクモ!あの女だ!あいつを沈めろ!」
同時に、俺は大地に手をつく。
「ふるへ・・・足玉・・・
ゆらゆらと・・・」
首から下げた足玉が鈍い光を放った。
メリっと嫌な音を立て、周囲の大地がひび割れ、割ける。
その割れ目から一斉に植物の根が伸び、大蛇のごとくのたうち回った。
大地の下にある植物たちに強制的に生命力を与え、その成長を暴走させる。
俺の持つ、唯一といっていい攻撃手段だ。
植物の根は土御門、その横の女陰陽師を捉え、狐と狐が守る綾音という女にも襲いかかる。
無数の虫と大地から這い上がる無数の触手が如き植物の根・・・
ひねり・・・潰されろ!
足玉にせよ、蜂肩巾にせよ、神宝の持つ最大の力はこの無限の物量だ。
たとえどんなに強い力を持とうとも所詮は人間や妖怪は『有限』の存在だ。神の持つ『無限』には敵わない。
ーこのまま、一気に押し切ってやる!
足玉の力をさらに大地に流し込む。木々の根が流し込まれた大量の生命力を吸収しきれず、歪に膨れ上がり、所々で爆ぜた。
それと同時にシラクモも、穿った四つの裂け目から溢れ出る全ての昆虫の奔流を、綾音めがけて集中させる。
ーこれだけの量・・・いかにあの狐が強かろうが
引き潰すことができる・・・そう確信していた。
しかし・・・
狐がにやりと赤く嗤う。
持っている槍の石づきを大地に突き刺し、何事か呪言を奏上する。
刹那、晴れているはずの天から雷光が落ちてくる。その雷光は突き立てた槍の穂先に落ち、八条の稲妻となって周囲の空間を穿った。
稲妻は虫たちを一瞬で消し炭にし、盛り上がった植物の根を寸断する。
そして、そのままシラクモと俺の胸を貫いた。
「がはぁ・・・」
身体の内側を特大のハンマーで叩かれたような衝撃に、一瞬で意識が持っていかれる。足玉のお陰で身体は死ぬことはないが、精神がついていかない。
俺は、膝をついてしまう。
『金剛縛鎖!』
狐が離れたところにいた女陰陽師のものと思しき名を叫ぶ。爆発的な音がしたかと思うと、俺の後ろで虫たちが弾け飛び、一瞬の内に移動した狐が女陰陽師の前に降り立ち、槍を振るう。槍の力だろうか、そのたった一薙で数千の虫たちがきれいに消し飛ぶ。
どうやらあの「綾音」という術者が狐のアキレス腱のようだ。使役者なのかもしれない。
ならば・・・!
「シラクモ!あの女だ!あいつを沈めろ!」
同時に、俺は大地に手をつく。
「ふるへ・・・足玉・・・
ゆらゆらと・・・」
首から下げた足玉が鈍い光を放った。
メリっと嫌な音を立て、周囲の大地がひび割れ、割ける。
その割れ目から一斉に植物の根が伸び、大蛇のごとくのたうち回った。
大地の下にある植物たちに強制的に生命力を与え、その成長を暴走させる。
俺の持つ、唯一といっていい攻撃手段だ。
植物の根は土御門、その横の女陰陽師を捉え、狐と狐が守る綾音という女にも襲いかかる。
無数の虫と大地から這い上がる無数の触手が如き植物の根・・・
ひねり・・・潰されろ!
足玉にせよ、蜂肩巾にせよ、神宝の持つ最大の力はこの無限の物量だ。
たとえどんなに強い力を持とうとも所詮は人間や妖怪は『有限』の存在だ。神の持つ『無限』には敵わない。
ーこのまま、一気に押し切ってやる!
足玉の力をさらに大地に流し込む。木々の根が流し込まれた大量の生命力を吸収しきれず、歪に膨れ上がり、所々で爆ぜた。
それと同時にシラクモも、穿った四つの裂け目から溢れ出る全ての昆虫の奔流を、綾音めがけて集中させる。
ーこれだけの量・・・いかにあの狐が強かろうが
引き潰すことができる・・・そう確信していた。
しかし・・・
狐がにやりと赤く嗤う。
持っている槍の石づきを大地に突き刺し、何事か呪言を奏上する。
刹那、晴れているはずの天から雷光が落ちてくる。その雷光は突き立てた槍の穂先に落ち、八条の稲妻となって周囲の空間を穿った。
稲妻は虫たちを一瞬で消し炭にし、盛り上がった植物の根を寸断する。
そして、そのままシラクモと俺の胸を貫いた。
「がはぁ・・・」
身体の内側を特大のハンマーで叩かれたような衝撃に、一瞬で意識が持っていかれる。足玉のお陰で身体は死ぬことはないが、精神がついていかない。
俺は、膝をついてしまう。
『金剛縛鎖!』

