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天狐あやかし秘譚
第42章 愛多憎生(あいたぞうせい)
治療法のない病気。ただただ、進行に伴う身体的な問題への対症療法があるだけだった。医師は無情に告げた『颯馬さんの命は、あと5年、もたないでしょう』と。

望まれ、健康で、美しく、何でもできる真白。
望まれず、死が約束され、醜く、何一つ満足にできない俺。

憎しみが、頂点に達する。
その憎しみは、自分でも意外な形で爆発した。

ある春の日だった。
新しい学年に上がった真白を祝うため、女中が豪勢な料理を作っていた。

『明日から、真白は5年生だな』
『うん!』
『お勉強ますます頑張ってね・・・。あ、そうそう、春の発表会・・・真白はとうとう主役をやるんですよ。初めてのプリマドンナよ』
『おお!それはすごいな!』
『パパ、見に来てね!絶対ね!』
食卓からは、明るい声が響いていた。でも、そこに俺はいなかった。
日和見感染をしやすくなった身体だったので、真白への感染を恐れた両親は、俺と真白の接触を嫌った。特に食事時は一緒にいさせることは決してなかった。

俺は隣の部屋で、女中に給仕されながら食事をとっていた。
笑い声が漏れ聞こえる中、たったひとりで。
下手に、食べているものが一緒なのが、より辛かった。

まるで・・・俺だけ、家族ではないような。
いや、もっと悪い。真白に、家族に害悪を齎す存在とされている。

俺は・・・怪物だ。

食べ終わり、俺は黙って自分の部屋に戻る。ベッドと本棚と机とタンス。生活に必要最低限なものが無機質に並ぶ、まるで、牢獄のような部屋。

ベッドにごろりと横になる。
このまま、俺は、ただただ朽ちていくのか・・・。そう思うと、胸が張り裂けそうに苦しかった。

『兄様・・・お風呂、パパが出たって』

真白が俺の風呂の順番を知らせてきた。いつもは女中の役割だったが、この日はどういうわけか真白が来た。

この家では、真白が一番風呂に入る。次に母が、次いで祖父母、そして、父が入る。
俺が入るのは、父が出た後、一番最後だった。

俺が応えなかったので、不審に思ったのかそっと扉を開けて中を覗く。
『兄様?』
覗き込んだ真白を見て、俺は息を呑んだ。
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