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天狐あやかし秘譚
第44章 捲土重来(けんどちょうらい)

意識を少し広げてみる。すると・・・
「おった・・・」
木の上に立っていた。そういやお前、最初に登場したときも木の上にいたな。馬鹿と煙はと言うが、高いところ好きなんだな・・・。
格好の・・・的だ。
あたりの蜂達があらかた片付いたのを見計らい、俺は木の上の白髪男・・・『シラクモ』に狙いを定める。電撃の咆哮。これ喰らって、逝きさらせ!
「輝魏霊龍 雷光・・・」
呪言の奏上とともに青龍の顎に霊力の高まりを感じる。それは雷球となり電圧を高め、青龍の咆哮とともに打ち出され直線上の全ての敵を猛った雷鎚で貫いていく・・・。
しかし、殺った!と思った瞬間、地面がぐらりと揺れ、体勢が崩れてしまう。そのせいで集中が解け、高めた霊力はせっかく勧請した青龍と共に霧消した。
なんや?!
「土御門様!」
「ぎゃ!だ・・・ダリ!」
瀬良たちもバランスを崩したようで口々に叫び声を上げている。急に青龍が消えたせいで、知覚がまだ十分に戻らず、俺自身は自分の状況をすぐに把握できなかった。
「崩れる・・・」
ボソリと天狐の声がしたかと思うと、あたりにバリバリバリ!とものすごい音が響き渡る。一瞬、宙にふわりと浮いたかのような感覚を感じたと思うと、俺達は一気に落下を始めた。
「いやああ!!」
「瀬良!」
やっと視覚が戻った俺が、最初に目にしたのは地面に空いた大穴に落ちる瀬良の姿だった。思わず手を伸ばす。
クソ!上空はフェイクか!?
視野の端、大穴の壁に無数の虫けらが這い回るのが見えた。そして、ボロボロに崩れた木の根たち・・・。あいつらは、俺達の意識を上に向けさせて、その実、地面の中の木の根を枯らし虫たちに大穴掘らせていたのだ。
まんまと乗ってしまったってわけかい!
こりゃやばいで・・・と思った刹那、
「ダリ!」
綾音の叫び声が響いたかと思うと、俺達の体は宙空でふわりと静止した。
いや違う。正確に言えば、宙に浮いた天狐が綾音を両手で横抱きにし、瀬良を瞬時に長く伸ばした髪の毛で包み込むように支え、俺のことは着ているシャツを足で引っ掛けて救ってくれたのだ。
救ってくれたのだが、シャツの首の部分が締まって・・・死・・・死んでまう!!
「ぐええええ!」
俺だけ妙な声が出た。
「おった・・・」
木の上に立っていた。そういやお前、最初に登場したときも木の上にいたな。馬鹿と煙はと言うが、高いところ好きなんだな・・・。
格好の・・・的だ。
あたりの蜂達があらかた片付いたのを見計らい、俺は木の上の白髪男・・・『シラクモ』に狙いを定める。電撃の咆哮。これ喰らって、逝きさらせ!
「輝魏霊龍 雷光・・・」
呪言の奏上とともに青龍の顎に霊力の高まりを感じる。それは雷球となり電圧を高め、青龍の咆哮とともに打ち出され直線上の全ての敵を猛った雷鎚で貫いていく・・・。
しかし、殺った!と思った瞬間、地面がぐらりと揺れ、体勢が崩れてしまう。そのせいで集中が解け、高めた霊力はせっかく勧請した青龍と共に霧消した。
なんや?!
「土御門様!」
「ぎゃ!だ・・・ダリ!」
瀬良たちもバランスを崩したようで口々に叫び声を上げている。急に青龍が消えたせいで、知覚がまだ十分に戻らず、俺自身は自分の状況をすぐに把握できなかった。
「崩れる・・・」
ボソリと天狐の声がしたかと思うと、あたりにバリバリバリ!とものすごい音が響き渡る。一瞬、宙にふわりと浮いたかのような感覚を感じたと思うと、俺達は一気に落下を始めた。
「いやああ!!」
「瀬良!」
やっと視覚が戻った俺が、最初に目にしたのは地面に空いた大穴に落ちる瀬良の姿だった。思わず手を伸ばす。
クソ!上空はフェイクか!?
視野の端、大穴の壁に無数の虫けらが這い回るのが見えた。そして、ボロボロに崩れた木の根たち・・・。あいつらは、俺達の意識を上に向けさせて、その実、地面の中の木の根を枯らし虫たちに大穴掘らせていたのだ。
まんまと乗ってしまったってわけかい!
こりゃやばいで・・・と思った刹那、
「ダリ!」
綾音の叫び声が響いたかと思うと、俺達の体は宙空でふわりと静止した。
いや違う。正確に言えば、宙に浮いた天狐が綾音を両手で横抱きにし、瀬良を瞬時に長く伸ばした髪の毛で包み込むように支え、俺のことは着ているシャツを足で引っ掛けて救ってくれたのだ。
救ってくれたのだが、シャツの首の部分が締まって・・・死・・・死んでまう!!
「ぐええええ!」
俺だけ妙な声が出た。

