この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第44章 捲土重来(けんどちょうらい)

「ダリ・・・」
私はダリを振り仰ぐ。いつか狂骨から清香ちゃんを分離したように、女怪になりかかった河西さんを人間に戻せたように・・・なんとか、なんとかならないの?
私が見つめている意味がわかったのだろう。ダリは私の方を見ると、軽く首を振った。それは、超妖力を有するダリであったとしても、疱瘡神をもう一度深く封印したり、真白と疱瘡神を分離することが叶わないということを意味していた。
そして、ダリにできないのなら、きっとこの世の誰にもできない・・・。
そんな・・・。
蛇之麁正を上段に振り上げる土御門を、真白は震える瞳で見つめ続けた。
「た・・・のむ・・・。やめてくれ・・・」
颯馬が絞り出すように言う。そして・・・
「兄・・様・・・?」
その瞳から涙が一筋零れた。
「すまんな・・・」
その涙に土御門も感じるものがあったのか、若干剣を持つ手を振り上げる。やはり土御門自身も躊躇しているのだろう。だが、そのためらいも一瞬だった。再び柄を握る手に力がこもるのが見て取れた。
「往生・・・せえよ・・・」
蛇之麁正・・・疱瘡神を殺せる唯一の神剣が落ちる夕日の光に染まり、まるで、すでに人を切り、その血を吸ったかのように朱くギラリと光った。
「真白は・・・人に戻れる」
颯馬が絞り出した言葉を聞き、土御門は振り下ろしかけた剣を止めた。
「なんやて?・・・こいつ、人に戻れんのか?」
「足玉があれば・・・俺が、足玉を真白に返す」
その言葉に今度は真白が目を見開く。
「ダメ!兄様・・・そんなことしたら!」
「・・・だから、お願いだ・・・。真白を・・・真白を・・・殺さないでくれ・・・」
颯馬の両目から涙が溢れる。顎から滴り、地面に落ちて消えていく。
妹を・・・守るのに、必死なんだ・・・。
私はそう思った。
「お前のその足玉があれば、この子は疱瘡神にならんと済むんか?」
「そうだ・・・これが一族の宝。疱瘡神を抑え込む力だった・・・」
ギリ・・・と土御門が歯噛みする。彼も葛藤しているようだ。
それはそうだろう。颯馬の言う事が真実である保証などなにもない。
私はダリを振り仰ぐ。いつか狂骨から清香ちゃんを分離したように、女怪になりかかった河西さんを人間に戻せたように・・・なんとか、なんとかならないの?
私が見つめている意味がわかったのだろう。ダリは私の方を見ると、軽く首を振った。それは、超妖力を有するダリであったとしても、疱瘡神をもう一度深く封印したり、真白と疱瘡神を分離することが叶わないということを意味していた。
そして、ダリにできないのなら、きっとこの世の誰にもできない・・・。
そんな・・・。
蛇之麁正を上段に振り上げる土御門を、真白は震える瞳で見つめ続けた。
「た・・・のむ・・・。やめてくれ・・・」
颯馬が絞り出すように言う。そして・・・
「兄・・様・・・?」
その瞳から涙が一筋零れた。
「すまんな・・・」
その涙に土御門も感じるものがあったのか、若干剣を持つ手を振り上げる。やはり土御門自身も躊躇しているのだろう。だが、そのためらいも一瞬だった。再び柄を握る手に力がこもるのが見て取れた。
「往生・・・せえよ・・・」
蛇之麁正・・・疱瘡神を殺せる唯一の神剣が落ちる夕日の光に染まり、まるで、すでに人を切り、その血を吸ったかのように朱くギラリと光った。
「真白は・・・人に戻れる」
颯馬が絞り出した言葉を聞き、土御門は振り下ろしかけた剣を止めた。
「なんやて?・・・こいつ、人に戻れんのか?」
「足玉があれば・・・俺が、足玉を真白に返す」
その言葉に今度は真白が目を見開く。
「ダメ!兄様・・・そんなことしたら!」
「・・・だから、お願いだ・・・。真白を・・・真白を・・・殺さないでくれ・・・」
颯馬の両目から涙が溢れる。顎から滴り、地面に落ちて消えていく。
妹を・・・守るのに、必死なんだ・・・。
私はそう思った。
「お前のその足玉があれば、この子は疱瘡神にならんと済むんか?」
「そうだ・・・これが一族の宝。疱瘡神を抑え込む力だった・・・」
ギリ・・・と土御門が歯噛みする。彼も葛藤しているようだ。
それはそうだろう。颯馬の言う事が真実である保証などなにもない。

