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天狐あやかし秘譚
第45章 奸佞邪智(かんねいじゃち)

「なんや!」
先程の衝撃で倒れ込んでいた土御門が起き上がり、目を剥く。それは、真白が疱瘡神に変貌していたからだけではなかった。その周囲の地面が黒く盛り上がり、ぼこん、ぼこんと何かが生み出されていくのを目の当たりにしたからでもあった。その何かはたちまち、やせ細り、腹が丸く出っ張った黒い人形の姿に変わっていく。
「あれは・・・疫鬼・・・疱瘡神の眷属です。近づけば病に倒れます。離れて戦いましょう」
瀬良が私の手を引き、疱瘡神から距離を取る。ダリもふわりと宙空に浮かびバックステップで間を空けた。
「眷属呼びよったか・・・ありゃいよいよ・・・」
ダメか、という言葉は敢えて呑み込んだのだろうことは私にも分かった。背後の結界はとうに壊れている。ここで疱瘡神を食い止めなければ日本中が大パニックになってしまう。
土御門の目に光が宿った。どうやら覚悟を決めたようだった。
「天狐はん!疱瘡神・・・滅するで」
その言葉にダリも槍を構え直した。
「にィ゙・・・さマ・・・を・・・くルし・・・める・・・ナ・・・」
疱瘡神が一歩、一歩とこちらに近づいてくる。それにつれて、瘴気が一層濃くなり、息苦しくなる。存在しているだけで人間の脅威になる・・・疱瘡神の名は伊達ではない。
「綾音さん、もう少し離れましょう。結界を張ります。あまりアレに近づかれては、私達の持っている護符ではもたないかもしれません・・・」
そうか、疱瘡神があれだけ活性化しているんだ。通常なら近づいただけで病気になっても不思議じゃないのだろう。今、私達がこうして平気でいられるのが、この服に縫い付けてある護符のおかげだとするならば、これはやはり相当の力を有しているといえる。
「綾音さんもう少し下がってください」
瀬良に手で制されて、更に私は後ろに下がる。無意識にぎゅっと服の上から護符を握りしめる。これが、今、私達の命綱と言ってもいい。瀬良も数歩下がり左手で刀印を切り、右手を地面につき、呪言を奏上する。
おそらく土気の結界を張ろうとしているのだろうということくらいは私にもわかる。
先程の衝撃で倒れ込んでいた土御門が起き上がり、目を剥く。それは、真白が疱瘡神に変貌していたからだけではなかった。その周囲の地面が黒く盛り上がり、ぼこん、ぼこんと何かが生み出されていくのを目の当たりにしたからでもあった。その何かはたちまち、やせ細り、腹が丸く出っ張った黒い人形の姿に変わっていく。
「あれは・・・疫鬼・・・疱瘡神の眷属です。近づけば病に倒れます。離れて戦いましょう」
瀬良が私の手を引き、疱瘡神から距離を取る。ダリもふわりと宙空に浮かびバックステップで間を空けた。
「眷属呼びよったか・・・ありゃいよいよ・・・」
ダメか、という言葉は敢えて呑み込んだのだろうことは私にも分かった。背後の結界はとうに壊れている。ここで疱瘡神を食い止めなければ日本中が大パニックになってしまう。
土御門の目に光が宿った。どうやら覚悟を決めたようだった。
「天狐はん!疱瘡神・・・滅するで」
その言葉にダリも槍を構え直した。
「にィ゙・・・さマ・・・を・・・くルし・・・める・・・ナ・・・」
疱瘡神が一歩、一歩とこちらに近づいてくる。それにつれて、瘴気が一層濃くなり、息苦しくなる。存在しているだけで人間の脅威になる・・・疱瘡神の名は伊達ではない。
「綾音さん、もう少し離れましょう。結界を張ります。あまりアレに近づかれては、私達の持っている護符ではもたないかもしれません・・・」
そうか、疱瘡神があれだけ活性化しているんだ。通常なら近づいただけで病気になっても不思議じゃないのだろう。今、私達がこうして平気でいられるのが、この服に縫い付けてある護符のおかげだとするならば、これはやはり相当の力を有しているといえる。
「綾音さんもう少し下がってください」
瀬良に手で制されて、更に私は後ろに下がる。無意識にぎゅっと服の上から護符を握りしめる。これが、今、私達の命綱と言ってもいい。瀬良も数歩下がり左手で刀印を切り、右手を地面につき、呪言を奏上する。
おそらく土気の結界を張ろうとしているのだろうということくらいは私にもわかる。

