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天狐あやかし秘譚
第45章 奸佞邪智(かんねいじゃち)

☆☆☆
空間が縦に裂け、そこからシラクモを背負った緋紅が姿を現した。
「「おかえりなさいませ。お館様」」
古鏡を手にした二人の巫女姿の女性が同時に言った。
緋紅は無造作にシラクモを床に転がすと、座椅子に腰を下ろす。
「ああ、ただいま。キヌギヌ、スクセ」
スクセと呼ばれた女性が持つ白い鏡からは、まるで映写機のようにとある情景を映し出している。遠くの情景を映し出すことができる神宝『沖津鏡』(おきつかがみ)の力だ。
もちろん、そこに映し出されている情景は、先程まで緋紅がいた場所、中類村北部の山中であり、今まさにダリ、土御門、瀬良、綾音が疱瘡神と化した真白と交戦している場所であった。
「お館様・・・?なぜ帰ってらしたのですか?
お館様の八握剣なら、あの場の者、全て斬り伏せることが出来たでしょうに」
キヌギヌとスクセと呼ばれた二人の巫女は、一卵性双子なのか、外見上は同じ姿をしている。年の頃はまだ20そこそこといったところだろうか。まだあどけなさの残る顔立ちをしていた。ただ、持っている鏡の色が違うことで区別できる。
白い沖津鏡を持つスクセ
黒い辺津鏡を持つキヌギヌ
今の発言は辺津鏡(へつかがみ)の巫女、キヌギヌのものであった。
「そうだね・・・でもね、あれでいいんだよ。
僕は種を蒔いたんだよ。
あの疱瘡神はイタツキを愛している。
イタツキもあの疱瘡神を愛している。
どうなるかな・・・これから・・・楽しみだねぇ」
緋紅が薄暗い和室の中、肘掛けにもたれて、ニヤリと笑った。
空間が縦に裂け、そこからシラクモを背負った緋紅が姿を現した。
「「おかえりなさいませ。お館様」」
古鏡を手にした二人の巫女姿の女性が同時に言った。
緋紅は無造作にシラクモを床に転がすと、座椅子に腰を下ろす。
「ああ、ただいま。キヌギヌ、スクセ」
スクセと呼ばれた女性が持つ白い鏡からは、まるで映写機のようにとある情景を映し出している。遠くの情景を映し出すことができる神宝『沖津鏡』(おきつかがみ)の力だ。
もちろん、そこに映し出されている情景は、先程まで緋紅がいた場所、中類村北部の山中であり、今まさにダリ、土御門、瀬良、綾音が疱瘡神と化した真白と交戦している場所であった。
「お館様・・・?なぜ帰ってらしたのですか?
お館様の八握剣なら、あの場の者、全て斬り伏せることが出来たでしょうに」
キヌギヌとスクセと呼ばれた二人の巫女は、一卵性双子なのか、外見上は同じ姿をしている。年の頃はまだ20そこそこといったところだろうか。まだあどけなさの残る顔立ちをしていた。ただ、持っている鏡の色が違うことで区別できる。
白い沖津鏡を持つスクセ
黒い辺津鏡を持つキヌギヌ
今の発言は辺津鏡(へつかがみ)の巫女、キヌギヌのものであった。
「そうだね・・・でもね、あれでいいんだよ。
僕は種を蒔いたんだよ。
あの疱瘡神はイタツキを愛している。
イタツキもあの疱瘡神を愛している。
どうなるかな・・・これから・・・楽しみだねぇ」
緋紅が薄暗い和室の中、肘掛けにもたれて、ニヤリと笑った。

