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天狐あやかし秘譚
第47章 猪突猛進(ちょとつもうしん)
☆☆☆
随分・・・昔のことを思い出していた。
私は、今、何をしているんだっけか?

考えが、よく、まとまらない。記憶の断片が次々に心に流れていく。意識が朦朧としている。眼の前の景色もぼんやりとしていて、周囲の状況がよく把握できない・・・。

ここは・・・どこ?
私は一体何をしてたんだっけ?
私は、一体、どうしてしまったのだろう?

どうやら森の中にいるようだということは分かった。
ああ・・・何か、大事なことをしていた気がする。
何か・・・しなくてはいけないことがあった気が・・・。

切迫感があった。でも、眼の前の景色はどこか遠くで起こっていることのように感じられて、全く現実感を欠いていて、何をしなくてはいけないか、判然としなかった。

左下を見る。

あれ・・・お兄ちゃん・・・。どうしてそんなところで、うずくまっているの。
どうしたの?具合悪いの?
だってもう、お兄ちゃん、足玉・・・持ってるでしょ?
真白、お兄ちゃんに足玉あげたよね・・・?
それがあるのに、どうして?

苦しいの?
痛いの?
大丈夫?お兄ちゃん・・・。

誰か・・・助けて・・・お兄ちゃんを助けて・・・。

私は、助けを求めて、周囲を見回した。
狭まった視野に何人かの人影が映る。

剣を振り回している男
槍を掲げる男
何事か叫びながらこちらに迫る女達・・・。

悪意を・・・敵意を感じる。
ピリピリと肌が粟立つ。

もしかして、こいつらがお兄ちゃんをいじめているの!?
許せない・・・許せない・・・
真白のお兄ちゃんを・・・私のお兄ちゃんを!

遠くの方で、誰かが大声で何かを叫んでいる。
男の持つ剣が、槍が光り輝き、その圧倒的な光量が私を貫かんと迫ってくる。

お兄ちゃんを守らなきゃ・・・
お兄ちゃんだけは守らなきゃ・・・

私はその人達からお兄ちゃんを隠すように立ちふさがる。

お兄ちゃん・・・大丈夫・・・私が守るから。
私が、絶対に、守るから・・・。
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