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天狐あやかし秘譚
第47章 猪突猛進(ちょとつもうしん)
☆☆☆
「天狐はん・・・綾音ちゃんの状態は?」
「いいわけないだろ・・・」

疱瘡神のもとから綾音を連れ戻った天狐はいつにも増して苛ついていた。動揺している、と言ってもいいかもしれない。

「なんとかなるんか?」
「我を・・・何だと思っている?」

天狐は持っている破魔の槍の石づきを地面に突き立て、何事か呟く。おそらく結界のための呪言であったのだろう。槍の切っ先から円錐状に淡い光の境界が生み出され、二人を包みこんでいった。結界が展開し終わると、その中で天狐が、その両の手を、横たわる綾音に差し向ける。

「鬼哭より 作にたかりし 虫ぞ焼きぬる
 千早ぶる 伊勢の神風 吹き散らせやも」

朗々と謳い上げた呪言に伴って、その手のひらから清涼な風が舞い上がり、綾音を中心に柔らかく渦を巻く。その風に煽られると、手の甲まで覆っていた真っ赤な発疹が、薄くなり、目に見えて引いていく。

この狐、回復術まで使えるのか・・・。

通常、回復術と戦闘術は呪力の使い方が全く異なるため、同じ人が修めていることは稀である。自分を含めた祓衆の人間は、回復術は使えたとしてもさほどの練度には至っていない。やはり戦い専門なのだ。

対して、結界術や補助のための術式を多く修めている祭部衆は、回復術に長けている者が多い。例えば、大鹿島は結界術を得意とするが、腕を切り落とされたくらいの怪我ならば術式のみで止痛、止血から縫合までやってのける。

人間では両立し得ない二つの技を、この狐はいとも容易く高水準でやってのけてしまう。
素直に認めたくはないが、やはり、すごい。

・・・こっちは、もう大丈夫そうやな。

綾音の生命は天狐にまかせておけば、おそらく助かるだろう。ただ、いかに天狐とはいえ、神の影響で進行した病気をそんなに容易く癒せるとは思えない。今の時点で、彼が早々に戦線に復帰するのは無理と見ていいだろう。

「ぐおあああああ!!」

瀬良ちゃんがうまくやって、疱瘡神から颯馬を引き離した。ただ、それに気付いた疱瘡神が天を仰いで咆哮を上げている。

その様子を見るに、次の大技のための力を溜めているところのようだ。そして、今、疱瘡神の注意は、完全に颯馬を抱えている瀬良に向かっている。

隙が、できた!
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