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天狐あやかし秘譚
第48章 月下氷人(げっかひょうじん)

「今日、ありがとな、瀬良ちゃん」
不意の言葉に、ドキンと心臓が跳ねる。
土御門様が面と向かって私のことを褒めることなど滅多にない。冗談めかして言われたことはいくらもあるが、こんなに真剣に・・・。
「鉄研を青龍で追った時も、虫が突っ込んできて、蛇之麁正使おうとした時も、完璧な動きやったわ。さすがやで」
細い目を更に細めて、笑う。
まずい・・・。また、顔が紅潮するのを感じる。青い月明かりのせいで顔色は見えないはずと思い、冷静を装う。
「土御門様にお仕えするのが、仕事ですから・・・」
「わいの考えてることくらいお見通しってか?」
「そうでないと、務まりません」
長い事、お仕えしているからこそ、わかる事がある。
あなたがどういうときに、どう考えて、どう動くか。何ができて、どこを補佐してほしいと思っているのか。
「んじゃ、今、わいが考えてること、当ててみ?」
今・・・?
何を考えて・・・と思い、顔を見た時、あまりにもあからさまに、彼の『意図』が伝わってきてしまい、今度こそ動揺した。
「そ・・・それは・・・」
「わからへん?」
「わ・・・わかりません!」
ぷいっとそっぽを向くことしかできない。我ながら、不器用すぎるし、うぶすぎる。
くっくっく・・・と土御門様の含み笑いが聞こえる。
「わい、今日、めっちゃ疲れてん。蛇之麁正・・・神剣あんだけ振り回したしなぁ・・・。それに、疱瘡神、封印めっちゃ大変やってん」
ちらっと右目だけを大きく見開き、口角が上がる。
「お勤め、してくれへんの?」
うう・・・。
その言葉が私に言い訳を与えようとしていることも、分かってしまう。分かってしまうだけに頷き難い。
「夕香が、ほしい」
だけど、そんな抵抗も、彼の言葉で、あっさりと打ち砕かれた。
本当に・・・ずるい・・・。
不意の言葉に、ドキンと心臓が跳ねる。
土御門様が面と向かって私のことを褒めることなど滅多にない。冗談めかして言われたことはいくらもあるが、こんなに真剣に・・・。
「鉄研を青龍で追った時も、虫が突っ込んできて、蛇之麁正使おうとした時も、完璧な動きやったわ。さすがやで」
細い目を更に細めて、笑う。
まずい・・・。また、顔が紅潮するのを感じる。青い月明かりのせいで顔色は見えないはずと思い、冷静を装う。
「土御門様にお仕えするのが、仕事ですから・・・」
「わいの考えてることくらいお見通しってか?」
「そうでないと、務まりません」
長い事、お仕えしているからこそ、わかる事がある。
あなたがどういうときに、どう考えて、どう動くか。何ができて、どこを補佐してほしいと思っているのか。
「んじゃ、今、わいが考えてること、当ててみ?」
今・・・?
何を考えて・・・と思い、顔を見た時、あまりにもあからさまに、彼の『意図』が伝わってきてしまい、今度こそ動揺した。
「そ・・・それは・・・」
「わからへん?」
「わ・・・わかりません!」
ぷいっとそっぽを向くことしかできない。我ながら、不器用すぎるし、うぶすぎる。
くっくっく・・・と土御門様の含み笑いが聞こえる。
「わい、今日、めっちゃ疲れてん。蛇之麁正・・・神剣あんだけ振り回したしなぁ・・・。それに、疱瘡神、封印めっちゃ大変やってん」
ちらっと右目だけを大きく見開き、口角が上がる。
「お勤め、してくれへんの?」
うう・・・。
その言葉が私に言い訳を与えようとしていることも、分かってしまう。分かってしまうだけに頷き難い。
「夕香が、ほしい」
だけど、そんな抵抗も、彼の言葉で、あっさりと打ち砕かれた。
本当に・・・ずるい・・・。

