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天狐あやかし秘譚
第50章 【第11話 管狐】辺幅修飾(へんぷくしゅうしょく)

あの高2のバレンタインから、島本と私の間には微妙な距離感が生まれてしまった。正確に言えば、島本自身は別に何ら変わることはなかった。私が、彼を避けたのだ。
『今度、彼女と遊園地に行くんだ』
『わりい、今日は、彼女と図書館で勉強するって』
『週末か・・・彼女どうかな?』
事あるごとに目に映る、耳に障る『彼女』という言葉。
それに、私は耐えることができなかった。
そして、そのまま高3の夏休みが過ぎ、文理でクラスが別れてからはなおさら交流がなくなった。彼は地元の大学に進学し、私は東京の大学を選んだ。
彼女と島本が、どうなったのか・・・、私はそれを知ろうともしなかった。
そう、私は逃げたのだ。
今、その、当の霧島遼子自身が目の前にいる。踵を返して逃げたい衝動に駆られるが、そういうわけにはいかない。そうなると今度は、職業病でつい、観察してしまう。プラチナ製だろうか、白銀に輝く長さの違うスティックが4本、楽器のウィンドチャイムのように下がっている大振りなイヤリングが目に付く。髪は少し茶がかかっていて、ふんわりとしたハーフアップに仕上げている。そして、目を強調するようなメイク。
嫌味ではないが、なんとなく派手な印象は否めない。
・・・左手に指輪はなかった。
『霧島』と呼んでも、それを訂正しなかったところを見ると、独身なのだろうと、推測できた。
そんな事を考えて少しホッとしている自分が、とても嫌になってしまう。
霧島遼子が結婚していないからと言って、島本がどういう状態か、なんてわからないではないか。
『今度、彼女と遊園地に行くんだ』
『わりい、今日は、彼女と図書館で勉強するって』
『週末か・・・彼女どうかな?』
事あるごとに目に映る、耳に障る『彼女』という言葉。
それに、私は耐えることができなかった。
そして、そのまま高3の夏休みが過ぎ、文理でクラスが別れてからはなおさら交流がなくなった。彼は地元の大学に進学し、私は東京の大学を選んだ。
彼女と島本が、どうなったのか・・・、私はそれを知ろうともしなかった。
そう、私は逃げたのだ。
今、その、当の霧島遼子自身が目の前にいる。踵を返して逃げたい衝動に駆られるが、そういうわけにはいかない。そうなると今度は、職業病でつい、観察してしまう。プラチナ製だろうか、白銀に輝く長さの違うスティックが4本、楽器のウィンドチャイムのように下がっている大振りなイヤリングが目に付く。髪は少し茶がかかっていて、ふんわりとしたハーフアップに仕上げている。そして、目を強調するようなメイク。
嫌味ではないが、なんとなく派手な印象は否めない。
・・・左手に指輪はなかった。
『霧島』と呼んでも、それを訂正しなかったところを見ると、独身なのだろうと、推測できた。
そんな事を考えて少しホッとしている自分が、とても嫌になってしまう。
霧島遼子が結婚していないからと言って、島本がどういう状態か、なんてわからないではないか。

