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天狐あやかし秘譚
第51章 堅忍不撓(けんにんふとう)

すまない・・・。これ以上は、私が耐えられない。
叶わない思いを、抱えることに、耐えることができない。
溢れる思いを押さえつけるので、精一杯だ。
左手を彼にかざす。
そこにある石の指輪を媒介に、術を発動した。
ー石意滅志(せきいめっし)
キュウゥウ・・・
微細な音を立て、指輪が震える。その振動が島本の脳の奥深く、記憶を司る海馬に作用した。これは、直前の記憶をかき消す土の術式・・・
一瞬、島本の目から光が失われ、また、戻った。
パチリ、と島本が瞬きをする。
「あれ・・・俺、なんかぼっとしていた?」
「別に、そんなことないぞ」
私は笑ってみせた。
「なんの、話をしていたっけ?」
「奥さんが戻ってきたって話だ」
「ああ、そうなんだ、不思議なこともあるもんだよ」
「良かったな」
私はグラスを上げた。今日は、いいことがあった、いいことを聞いた記念日だと、そう言って。
「また会おう、宝生前」
彼も応えてグラスを上げた。
互いのグラスが空中で触れ合い、軽い音を立てた。
叶わない思いを、抱えることに、耐えることができない。
溢れる思いを押さえつけるので、精一杯だ。
左手を彼にかざす。
そこにある石の指輪を媒介に、術を発動した。
ー石意滅志(せきいめっし)
キュウゥウ・・・
微細な音を立て、指輪が震える。その振動が島本の脳の奥深く、記憶を司る海馬に作用した。これは、直前の記憶をかき消す土の術式・・・
一瞬、島本の目から光が失われ、また、戻った。
パチリ、と島本が瞬きをする。
「あれ・・・俺、なんかぼっとしていた?」
「別に、そんなことないぞ」
私は笑ってみせた。
「なんの、話をしていたっけ?」
「奥さんが戻ってきたって話だ」
「ああ、そうなんだ、不思議なこともあるもんだよ」
「良かったな」
私はグラスを上げた。今日は、いいことがあった、いいことを聞いた記念日だと、そう言って。
「また会おう、宝生前」
彼も応えてグラスを上げた。
互いのグラスが空中で触れ合い、軽い音を立てた。

