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天狐あやかし秘譚
第53章 奇想天外(きそうてんがい)
☆☆☆
「「「すっごーい!」」」

みゆきちゃんと清香ちゃん、ついでに芝三郎が目をキラキラさせて食卓を眺めていた。今日の食事はちょっと奮発して手巻き寿司にしてみた。たまご、エビ、イカ、いくら、マグロ、その他魚介に加えて、しそやかいわれなどをお皿に盛り付け、すし飯と海苔を用意してある。ちなみに出来合いで申し訳ないが、ダリ用にいなり寿司も添えてあった。

大人には日本酒、子供用にはサイダーを用意。昨日は急だったので、簡単なものしかできなかったが、今日は準備万端だ。子どもたちの反応が予想以上で私としてはとても嬉しかった。

「こんなことまでしていただいて・・・」
清美さんはしきりに恐縮し、ペコペコと頭を下げる。
「大勢で食べたほうが楽しいですし!」
私は言う。実際それは事実だった。去年の夏前、お金をだまし取られて職も失った直後、自分のためだけに安い食材で料理をしていたときは、とてもわびしい気持ちだった。こうして自分が作ったものが喜ばれるのは、私をとても幸せな気持ちにする。

「さあ!みんな食べて食べて!」

子どもたちに簡単に手巻き寿司の要領を教えると、すぐに夢中になって作り始めた。ダリも上機嫌で日本酒といなり寿司に手を伸ばしていた。最初は遠慮がちだった清美さんも次第に打ち解けて、美味しそうに食べ始めた。

あ、そうだ、そうだ・・・。

「これ、忘れないうちに」
私はバックから清美さんのお財布を取り出した。
「え?・・・これって・・・」
「見つかったんです。たぶん、中身はちゃんとあると思いますよ。」
はい、と渡すと、清美さんはそれをぎゅっと抱きしめるようにする。ぽろりと涙をこぼした。
「本当に・・・ありがとうございます。」
「ママ・・・」
泣きだしたお母さんを心配したのか、みゆきちゃんが手巻き寿司を食べる手を止めて清美さんの膝に手を置く。清美さんは感極まったのか、みゆきちゃんに抱きつくようにしてその頭を撫でた。
「大丈夫・・・大丈夫なの・・・ママね、今、すごい嬉しくて、それで泣いちゃって」

ああ、よかった。

そう、この財布を見つけてもらうこと、それが私が占部衆にお願いしたことだったのだ。本来は私用に近いものなので、断られるかもと思ったが、貧乏神が絡んでいるということで土門さんも快諾してくれたのだ。
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