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天狐あやかし秘譚
第55章 不立文字(ふりゅうもんじ)
就職して、働き始める。あっという間に社長の目に止まり、秘書課に転属になった。そこでも彼女はその力をいかんなく発揮した。日々の仕事は充実していたけれども、彼女の心の洞はどんどん暗く、そして大きくなっていった。

そんな彼女を見て、『私』の胸はズキズキと疼くように痛んでいた。

そして、ついに彼女は運命の出会いを迎えることになる。

ひとつ年上の男性社員がアメリカ支社への転勤を終え、帰国した。その男性はアメリカにいたときから娘の噂を聞き及んでいた。彼は、その娘を欲した。

理由は・・・虚栄心だった。

自分は優れた人間だと思っていたその男は、優れた人間にふさわしい女を妻にと・・・ただ、それだけを願った。まるで、広告を見て、性能だけで電化製品を選ぶような、そんな乱暴な選び方。

『私』は叫んだ。

『ダメだ!』
『行くんじゃない!』
『そいつは、そいつを選ぶな!』

だけど『私』の声は届くはずもなかった。

男は娘の心の隙間にするりと入り込むように忍び寄った。
『君が必要だ』『僕なら君を幸せにできる』
歯の浮くようなセリフ。
戦略的に、詰将棋のように・・・。

そして、とうとう、娘は、その虚栄心の塊のような男と結婚してしまった。

程なくして妊娠した彼女は夫の求めで会社を辞めることになる。

その子の名は、彼女がつけた。夫は仕事で忙しいからと、彼女に一任したのだ。
付けた名を『美幸』といった。
幸せになりますように、という娘の美しい願いが込められていた。

しかし、美幸が生まれた後から、次第に夫である男の心は娘から離れていっていた。
言葉に毒がにじみ、目つきに険が混じるようになる。

単純に、娘に飽きた、というのが真相だった。

ところが、そんなことを知る由もない娘は、自分が悪いと考え、努力をした。男の気持ちを繋ぎ止めようとあれこれ考え、行動に移したのだ。自分を必要としている、という言葉に嘘はないと信じていたからだ。

折悪しく、その頃には男は社内でも次第に仕事を干されるようになっていた。自己中心的な態度が次第に周囲から反感を買うようになったのだ。当然、成果を上げることもできなくなる。
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