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天狐あやかし秘譚
第55章 不立文字(ふりゅうもんじ)
そして、ついに同期に出世で先んじられてしまった。
これまで自分が一番だと思い込んでいた男を、激しい動揺が襲う。
『こんなはずはない』
『この会社は人を見る目がない』
『こんなところにいたら駄目になってしまう』

そう思った男は、あっさりと会社を辞め、独立をする道を選んだ。自分には才能がある。そんな根拠のない自信が男にはあった。

だが、実際には男の能力などそれほどでもなかったのである。立ち上げた会社はうまくいくことはなかった。すぐに経営は暗礁に乗り上げることになる。

そこで、男は妻である娘を頼ろうとした。

『実家に融資をしてもらうようお願いしてほしい』

男としては当然の頼みだったが、娘としては承諾できないことだった。確かに助けてあげたい。でも、自分たちの失敗のツケを親に払わせることなどできない。そう考えたのだ。

『私も一緒に頑張るから、会社を立て直そう』

娘は経営を勉強し、一緒に会社を切り盛りしようと乗り出した。しかし、それは男のプライドをいたく傷つけることになる。

『お前は俺がひとりじゃできないと馬鹿にするのか』
『そんな事は言っていない!』

そんな不毛なやり取りが家庭内で繰り返された。
男が大声を上げると、美幸は火がついたように泣き出し、それがまた男の神経を逆なでする。

仕事もうまく行かない。家庭でも自分を崇めるべき妻がまるで自分と肩を並べるような発言をする。
耐えられない。こんな侮辱、耐えられるわけがない。

あっさりと男の心は限界を迎えた。

『もう、お前らの面倒は見てられない。
 そんなに俺を馬鹿にしたいなら、勝手にすればいい』

机の上にはそんな書き置きがあった。
男は、会社で雇っていた若い女と駆け落ちをしてしまったのだ。

娘は、男の手紙を握りしめ、呆然と座り込んだ。

後には、債務整理のための膨大な作業と、巨額の借金が残された。
だけど、その債務整理すら、彼女はひとりでやりこなしてしまう。
持ち前の粘り強さと才覚で・・・。歯を食いしばって、誰にも頼らず、弱音も吐かず。恨み言すら言わなかった。

でも、彼女の心もまた心は限界を迎えているのが『私』にはわかっていた。

これ以上、見ていられなかった。
『私』は、彼女の傍に降り立つことにした。この身に与えられた権能を・・・神の力を・・・『私』の本当の力を振るうために・・・。
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