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天狐あやかし秘譚
第56章 【第13話:天邪鬼】三人成虎(さんにんせいこ)

☆☆☆
転がるように私は走った。とにかく明るい方に、人がいるところに。闇雲に走ったためにどこをどう走ってるかわからなくなってきている。でも、とにかく逃げなくては!
後ろを振り返らなくても、気持ちの悪い臭いと気配でアレがすぐ後ろを追いかけてきていることはわかった。
渾身の力で走るものの、運動部でもない私はそんなに息が続かない。普段運動をしていない私は、足がガクガクし始め、胸が苦しくなってくる。息を吸うと肺が悲鳴をあげているのがよくわかった。
恐怖による涙と疲労で目が霞んでくる。その霞んだ景色の向こうに明るい幹線道路の街灯が見える。あそこまで行けば・・・!
走って、走って、走って・・・。
あと少しで幹線道路、というところまできた。しかし、目の前の細い十字路を通り過ぎようとしたとき、ぐいっと右側に身体を引っ張られる。
捕まったの!?
アレに捕まった、そう思った。そして、私は悲鳴をあげ、めちゃくちゃに腕を振り回す。
「やめて!放して!!」
「危ないわよ!あなた、何しているの!?」
女性の強い声が飛んできた。その声でやっと私は我に返る。
よく見ると、私の腕を掴んでいるのは、あのナニカの手ではなく、人間の女性のものだった。そして、その先には・・・短めの髪を後ろでひとつ結びにしている、キリッとした美人の女性がいた。シンプルな白のブラウスに濃い青のゆったりしたパンツ、足元はスニーカーというラフな恰好ながらも、どこか気品があるような、そんな人だった。
「死ぬ気なの!?」
その女性がぐいっと私の腕を引き寄せる。
え?死ぬ気って・・・。
その言葉でやっと私は自分が行こうとした方を見ることになる。そして、ゾッとした。
私が出ようとしたのは幹線道路ではなく、川だったのだ。それも都会の余り水の流れていない川だ。フェンスの低い所ならやすやすと超えて行けてしまう。超えて落ちれば、10メートル近く落下してコンクリートに激突することになる。死なないまでも大怪我は避けられないだろう。
なんで・・・!?
そして、私は慌てて来た道を振り返った。そこは暗い住宅街で、もちろん、あのナニカは影も形もなかった。
転がるように私は走った。とにかく明るい方に、人がいるところに。闇雲に走ったためにどこをどう走ってるかわからなくなってきている。でも、とにかく逃げなくては!
後ろを振り返らなくても、気持ちの悪い臭いと気配でアレがすぐ後ろを追いかけてきていることはわかった。
渾身の力で走るものの、運動部でもない私はそんなに息が続かない。普段運動をしていない私は、足がガクガクし始め、胸が苦しくなってくる。息を吸うと肺が悲鳴をあげているのがよくわかった。
恐怖による涙と疲労で目が霞んでくる。その霞んだ景色の向こうに明るい幹線道路の街灯が見える。あそこまで行けば・・・!
走って、走って、走って・・・。
あと少しで幹線道路、というところまできた。しかし、目の前の細い十字路を通り過ぎようとしたとき、ぐいっと右側に身体を引っ張られる。
捕まったの!?
アレに捕まった、そう思った。そして、私は悲鳴をあげ、めちゃくちゃに腕を振り回す。
「やめて!放して!!」
「危ないわよ!あなた、何しているの!?」
女性の強い声が飛んできた。その声でやっと私は我に返る。
よく見ると、私の腕を掴んでいるのは、あのナニカの手ではなく、人間の女性のものだった。そして、その先には・・・短めの髪を後ろでひとつ結びにしている、キリッとした美人の女性がいた。シンプルな白のブラウスに濃い青のゆったりしたパンツ、足元はスニーカーというラフな恰好ながらも、どこか気品があるような、そんな人だった。
「死ぬ気なの!?」
その女性がぐいっと私の腕を引き寄せる。
え?死ぬ気って・・・。
その言葉でやっと私は自分が行こうとした方を見ることになる。そして、ゾッとした。
私が出ようとしたのは幹線道路ではなく、川だったのだ。それも都会の余り水の流れていない川だ。フェンスの低い所ならやすやすと超えて行けてしまう。超えて落ちれば、10メートル近く落下してコンクリートに激突することになる。死なないまでも大怪我は避けられないだろう。
なんで・・・!?
そして、私は慌てて来た道を振り返った。そこは暗い住宅街で、もちろん、あのナニカは影も形もなかった。

