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天狐あやかし秘譚
第57章 自縄自縛(じじょうじばく)

そこには、大太刀を肩に載せた人物が立っていた。月にかかる雲が晴れ、その顔が青い光の中、くっきりと浮かび上がる。
土御門様・・・!?
そう、そこにいたのは、陰陽寮祓衆筆頭『助の一位』、私の主、土御門加苅その人だったのだ。
「あんさん・・・わいの瀬良ちゃんに何さらしてんねん」
土御門様が京依に対して凄む。そして、月明かりの中で、やっとその姿をはっきりと認識したのか、目を眇めるような仕草をする。
「人鬼・・・いや・・・まだ鬼になりきっとらんな?」
「土・・・御門様・・・ゲホゲホ・・・その子は・・・天邪鬼・・・です」
かろうじて、それだけ言えた。でも、それで限界だった。低酸素脳症か何かを起こしているのかもしれない。頭のしびれがとれない。まるで貧血で倒れる直前のようだ。耳のそばで心臓が脈打っているような奇妙な感じ。視界が徐々に灰色になり、風景が闇に沈んでいく。
お願い・・・土御門様・・・
彼女を助けてください。私は出来なかった。無理だった。
でも、でも・・・
きっとあなたなら、助けてくれますよね?
声にならない声を上げたところで、私の意識はぷつりと途絶えてしまった。
土御門様・・・!?
そう、そこにいたのは、陰陽寮祓衆筆頭『助の一位』、私の主、土御門加苅その人だったのだ。
「あんさん・・・わいの瀬良ちゃんに何さらしてんねん」
土御門様が京依に対して凄む。そして、月明かりの中で、やっとその姿をはっきりと認識したのか、目を眇めるような仕草をする。
「人鬼・・・いや・・・まだ鬼になりきっとらんな?」
「土・・・御門様・・・ゲホゲホ・・・その子は・・・天邪鬼・・・です」
かろうじて、それだけ言えた。でも、それで限界だった。低酸素脳症か何かを起こしているのかもしれない。頭のしびれがとれない。まるで貧血で倒れる直前のようだ。耳のそばで心臓が脈打っているような奇妙な感じ。視界が徐々に灰色になり、風景が闇に沈んでいく。
お願い・・・土御門様・・・
彼女を助けてください。私は出来なかった。無理だった。
でも、でも・・・
きっとあなたなら、助けてくれますよね?
声にならない声を上げたところで、私の意識はぷつりと途絶えてしまった。

