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天狐あやかし秘譚
第61章 怒髪衝天(どはつしょうてん)

☆☆☆
「明日香・・・土門は、あれは何をしているのですか?」
さすがに鈍い我が衆のボスも、ことの異常さ・・・というか、奇妙さに気づいたようだ。
それもそのはず、朝方、ふらっとやってきた土門が、宝生前さんが仕事をしている机の横に張り付くように座っているのだ。座って何をしているということもなく、じっーと宝生前の顔を見ているのである。表情は非常ににこやかで、見ているこちらまで微笑ましくなるほど、幸せそうな様子である。
「さあ、何でしょうか?杉山はなにか聞いてますか?」
敷島が首を傾げ、私の方に目を向けてくる。
本当に、鈍いですね、お二人共・・・っていうか、時刻はもう、午後2時を回ろうとしていたころだ。土門が来てから、かれこれ5時間近くが経過しようとしている。いくら仕事が好きでも、集中しすぎだろ、ふたりとも。
「ええと・・・宝生前のさんの顔を見ている、だそうです」
私も放っておくのは何だからと思ったし、一応『丞の一位』という位階を持っている上級幹部だ。朝方来たときにお茶を出してはいた。その時に聞いたら、『宝生前さんのお顔を見に来たのです』とにこやかに答えてくれたのだ。
「だそうです・・・大鹿島様」
「わかりました・・・それにしても、土門、仕事は大丈夫なのですか?」
大鹿島が落ち着いた様子で土門に声を掛ける。
いや、問題はそこじゃねえだろう、
宝生前さん、ものすごく仕事をやりにくそうにしているよ、何か言ってやれよ。
心のなかで衆のボスに突っ込む。口には出せないけど。
「大丈夫なのです。ご心配には及ばないのです!今日、私は休暇なのです」
答える土門に、またまた私は思う。
いや、そういう問題?
違うよね?
「そうなのですね・・・それならいいのでしょうか・・・」
良くないでしょ!
「明日香・・・土門は、あれは何をしているのですか?」
さすがに鈍い我が衆のボスも、ことの異常さ・・・というか、奇妙さに気づいたようだ。
それもそのはず、朝方、ふらっとやってきた土門が、宝生前さんが仕事をしている机の横に張り付くように座っているのだ。座って何をしているということもなく、じっーと宝生前の顔を見ているのである。表情は非常ににこやかで、見ているこちらまで微笑ましくなるほど、幸せそうな様子である。
「さあ、何でしょうか?杉山はなにか聞いてますか?」
敷島が首を傾げ、私の方に目を向けてくる。
本当に、鈍いですね、お二人共・・・っていうか、時刻はもう、午後2時を回ろうとしていたころだ。土門が来てから、かれこれ5時間近くが経過しようとしている。いくら仕事が好きでも、集中しすぎだろ、ふたりとも。
「ええと・・・宝生前のさんの顔を見ている、だそうです」
私も放っておくのは何だからと思ったし、一応『丞の一位』という位階を持っている上級幹部だ。朝方来たときにお茶を出してはいた。その時に聞いたら、『宝生前さんのお顔を見に来たのです』とにこやかに答えてくれたのだ。
「だそうです・・・大鹿島様」
「わかりました・・・それにしても、土門、仕事は大丈夫なのですか?」
大鹿島が落ち着いた様子で土門に声を掛ける。
いや、問題はそこじゃねえだろう、
宝生前さん、ものすごく仕事をやりにくそうにしているよ、何か言ってやれよ。
心のなかで衆のボスに突っ込む。口には出せないけど。
「大丈夫なのです。ご心配には及ばないのです!今日、私は休暇なのです」
答える土門に、またまた私は思う。
いや、そういう問題?
違うよね?
「そうなのですね・・・それならいいのでしょうか・・・」
良くないでしょ!

