この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第62章 【第15話 黄泉平坂】不知不覚(ふちふかく)

ナンバーがバレない限り、外に出ることなんかできない・・・
はず、と思いながら廊下を折れ、玄関の方を明かりで照らした。
「嘘・・・」
そこにはナンバーロックのところがすっぽりと穴が空き、半開きになった扉があった。穴の部分は機械のようなもので切り取った、というよりは、なにかとてつもない力で引きちぎった、みたいに見える。壊れたロック装置が電線にぶら下がり、風に煽られて揺れていた。
誰かが出ていったんじゃない!
誰か・・・いや、何かが入ってきた!!
とにかく子どもたちを安全なところに逃さなければ・・・その思いで可奈子は子どもたちが
就寝している居室棟に向かって走った。現在、なのはな園には30人ほどの子どもが収容されている。その生命を守らなければならない。
事務棟を抜け、居室棟に走る。その入口もまた、扉の取手が乱暴に引きちぎられていた。とにかくなにか尋常じゃない者がいるのは確かだ。
しかし・・・。
はたと可奈子は立ち止まる。金属の扉をいとも容易く引きちぎるようなモノ・・・それは果たして人間だろうか?仮に人間だったとしたら、複数の、しかも男性であろうことは容易に想像できた。
そう考えると、ここにいる事自体、ゾッとした。
ここまで突っ走ってきたけれども、先に男性である武田くんを起こすとか、110番をするべきではないだろうかと思い始めたのだ。
そうしよう、と、踵を返そうとすると、居室棟の中からボソボソとした声が聞こえた。
「なあ・・・お兄ちゃん達といっしょに行こうよ・・・」
「君ならできるんだよ?」
男の声だった。それも二人。やっぱり、誰かが居室棟に侵入している。
大声を出そうとしたが恐ろしくてできなかった。でも、二人の声の様子からして、子どもの中の誰かと話しているということは想像に固くなかった。
一体誰と・・・?
怖いが、確かめねばならないという使命感が勝った。可奈子は扉に近づくと、そこからそっと中を覗いた。居室棟の廊下の暗がりに細身の男がひとり、うずくまったような姿勢の男がひとりいた。うずくまっている男の影になって、子供の姿は見えないが、窓から差す該当の明かりが子どもの影を作っていた。
はず、と思いながら廊下を折れ、玄関の方を明かりで照らした。
「嘘・・・」
そこにはナンバーロックのところがすっぽりと穴が空き、半開きになった扉があった。穴の部分は機械のようなもので切り取った、というよりは、なにかとてつもない力で引きちぎった、みたいに見える。壊れたロック装置が電線にぶら下がり、風に煽られて揺れていた。
誰かが出ていったんじゃない!
誰か・・・いや、何かが入ってきた!!
とにかく子どもたちを安全なところに逃さなければ・・・その思いで可奈子は子どもたちが
就寝している居室棟に向かって走った。現在、なのはな園には30人ほどの子どもが収容されている。その生命を守らなければならない。
事務棟を抜け、居室棟に走る。その入口もまた、扉の取手が乱暴に引きちぎられていた。とにかくなにか尋常じゃない者がいるのは確かだ。
しかし・・・。
はたと可奈子は立ち止まる。金属の扉をいとも容易く引きちぎるようなモノ・・・それは果たして人間だろうか?仮に人間だったとしたら、複数の、しかも男性であろうことは容易に想像できた。
そう考えると、ここにいる事自体、ゾッとした。
ここまで突っ走ってきたけれども、先に男性である武田くんを起こすとか、110番をするべきではないだろうかと思い始めたのだ。
そうしよう、と、踵を返そうとすると、居室棟の中からボソボソとした声が聞こえた。
「なあ・・・お兄ちゃん達といっしょに行こうよ・・・」
「君ならできるんだよ?」
男の声だった。それも二人。やっぱり、誰かが居室棟に侵入している。
大声を出そうとしたが恐ろしくてできなかった。でも、二人の声の様子からして、子どもの中の誰かと話しているということは想像に固くなかった。
一体誰と・・・?
怖いが、確かめねばならないという使命感が勝った。可奈子は扉に近づくと、そこからそっと中を覗いた。居室棟の廊下の暗がりに細身の男がひとり、うずくまったような姿勢の男がひとりいた。うずくまっている男の影になって、子供の姿は見えないが、窓から差す該当の明かりが子どもの影を作っていた。

