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天狐あやかし秘譚
第67章 危急存亡(ききゅうそんぼう)

☆☆☆
突然の嵐が過ぎ去り、京本は恐る恐る目を開いた。
「っ!?」
そこは、見知らぬ夜の山の中だった。慌てて腕時計を見ると、20時13分。先程、ダリに軽口を叩いたときにちらっと見た時計が指していたのが20時10分だった。ほんの1〜2分程度の時間であたりの景色が全く違うものになってしまっていた。
そう言えば!?
あたりを見渡す。あの優男の姿を捉えなくてはいけない、そう考えたからだ。きょろきょろと見回していると、右前あたりの暗がりから声がした。
「おい、いつまでそうしている、早く来い」
月のない夜であるが、かすかに注ぐ星明かりでなんとかダリの姿を視認できた。ダリがくるりと背を向け、スタスタと闇の中に歩き出したことで、京本は慌てて声を掛ける。
「おい!待てよ!こんなに暗くちゃ・・・と・・ちょっと待て、待てってば!」
闇夜の中からチッという舌打ちの音が聞こえたかと思うと、おもむろにぽつりぽつりと京本の周辺に三つの灯火が灯った。
「うわ!な・・・なんだこりゃ!」
京本の頭の左上方、身体の右前方、足元の左側方にそれぞれ青白い火の玉が現れた。それは京本が動くと、同じ方向に進むので、彼の周囲だけが青い光で満たされることになる。
「狐火だ。そら、これで文句はあるまい」
京本がおっかなびっくり、その光に手を近づけると、熱くはない。ためにしと思い、そっと指をつけてみると、炎のようではあるが、全く熱を感じず、むしろヒヤリとしている。一体これはどうしたものだと思いつつ、ダリの方を見て、彼は再びびっくりすることになる。
「に、兄ちゃん、なんだいそりゃ、一体何の冗談だ!?」
それもそのはず、ダリの姿は頭から狐耳を生やし、フッさりした狐の尻尾を携え、服装も平安貴族さながらの直衣姿、綾音がいうところの『狐神モード』になっていた。
妖怪の存在を知られてはならない、という土御門の言葉を華麗に無視した結果である。たしかにダリにとって大事なのは綾音の生存と救出であり、この京本という奇妙な男が妖怪の存在を認知しようが、関係がないのである。
突然の嵐が過ぎ去り、京本は恐る恐る目を開いた。
「っ!?」
そこは、見知らぬ夜の山の中だった。慌てて腕時計を見ると、20時13分。先程、ダリに軽口を叩いたときにちらっと見た時計が指していたのが20時10分だった。ほんの1〜2分程度の時間であたりの景色が全く違うものになってしまっていた。
そう言えば!?
あたりを見渡す。あの優男の姿を捉えなくてはいけない、そう考えたからだ。きょろきょろと見回していると、右前あたりの暗がりから声がした。
「おい、いつまでそうしている、早く来い」
月のない夜であるが、かすかに注ぐ星明かりでなんとかダリの姿を視認できた。ダリがくるりと背を向け、スタスタと闇の中に歩き出したことで、京本は慌てて声を掛ける。
「おい!待てよ!こんなに暗くちゃ・・・と・・ちょっと待て、待てってば!」
闇夜の中からチッという舌打ちの音が聞こえたかと思うと、おもむろにぽつりぽつりと京本の周辺に三つの灯火が灯った。
「うわ!な・・・なんだこりゃ!」
京本の頭の左上方、身体の右前方、足元の左側方にそれぞれ青白い火の玉が現れた。それは京本が動くと、同じ方向に進むので、彼の周囲だけが青い光で満たされることになる。
「狐火だ。そら、これで文句はあるまい」
京本がおっかなびっくり、その光に手を近づけると、熱くはない。ためにしと思い、そっと指をつけてみると、炎のようではあるが、全く熱を感じず、むしろヒヤリとしている。一体これはどうしたものだと思いつつ、ダリの方を見て、彼は再びびっくりすることになる。
「に、兄ちゃん、なんだいそりゃ、一体何の冗談だ!?」
それもそのはず、ダリの姿は頭から狐耳を生やし、フッさりした狐の尻尾を携え、服装も平安貴族さながらの直衣姿、綾音がいうところの『狐神モード』になっていた。
妖怪の存在を知られてはならない、という土御門の言葉を華麗に無視した結果である。たしかにダリにとって大事なのは綾音の生存と救出であり、この京本という奇妙な男が妖怪の存在を認知しようが、関係がないのである。

