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天狐あやかし秘譚
第67章 危急存亡(ききゅうそんぼう)

京本は京本で、今日起こったことの全てが非現実的だったせいか、こういうこともあるのかもしれないなどと、ダリのこの妖怪としての姿を受け入れている様子だった。
「ゆくぞ、お前が我を見失うと色々面倒だ。早く歩け」
ダリが暗闇の中を歩いていく。その後ろを不思議な狐火に囲まれた京本がくっついていった。そんな形で数分歩いたところで、山の斜面にぽつんと置かれている小さな祠が現れた。祠の大きさは立ち上がったダリの腰の高さくらい。石造りの矩形の収納空間を三角形の屋根が覆っているという簡素な作りだった。ちなみに、祠の中は京本が見る限りは空であるように見えた。
ダリがしゃがみ込み、その祠を覗き込むような仕草をする。
一体コイツは空っぽの石の祠を覗いて何をしているんだ?
京本がそう思い始めた頃、ダリが祠の前に立ち、その屋根の部分に手を置く。すると、その手を中心に薄いオレンジ色の光が闇夜に溢れ出してきた。
「塞ぎ坐(ま)す 久那土の神よ 聞こえ給へよ
まなごじの 真直なる者 今ここに来ぬ」
ダリが朗々と奏上した呪言に合わせて、手のひらからの光がより強くなる。それはついに真昼のように周囲を照らし出し、あまりの眩しさに京本は両の腕で顔を覆わなくてはいけなくなった。
数秒間、光の奔流が続いたかと思うと、音もなくそれは収束した。周囲が再び闇に包まれたことを察知して京本は顔を覆っていた腕を下ろす。
な・・・!?
先程見た時は、祠の向こう側は確かに山の斜面だったが、目を開けると、そこにはポッカリと穴が開いていた。一体どんな魔法を使ったのか・・・と訝しがる京本の方を一瞥することすらせず、ダリは洞穴へとずんずんと入っていった。
「お・・・ちょ、待てよ!」
京本も慌ててダリを追いかける。洞穴は鍾乳洞のような感じではなく、どちらかと言うと、人工的に掘られた坑道のようであった。坑道と言っても、別に高さや幅が一定であるわけでもなく、あるところはとても歩きやすいが突然、人ひとりが通るのがやっとなくらいの狭さになるところもあったりする。また、悪いことに足元も平らではなく、粗削りの岩が凸凹と突き出し、歩きにくいことこの上ない。しかも下り坂だと来ている。
「ゆくぞ、お前が我を見失うと色々面倒だ。早く歩け」
ダリが暗闇の中を歩いていく。その後ろを不思議な狐火に囲まれた京本がくっついていった。そんな形で数分歩いたところで、山の斜面にぽつんと置かれている小さな祠が現れた。祠の大きさは立ち上がったダリの腰の高さくらい。石造りの矩形の収納空間を三角形の屋根が覆っているという簡素な作りだった。ちなみに、祠の中は京本が見る限りは空であるように見えた。
ダリがしゃがみ込み、その祠を覗き込むような仕草をする。
一体コイツは空っぽの石の祠を覗いて何をしているんだ?
京本がそう思い始めた頃、ダリが祠の前に立ち、その屋根の部分に手を置く。すると、その手を中心に薄いオレンジ色の光が闇夜に溢れ出してきた。
「塞ぎ坐(ま)す 久那土の神よ 聞こえ給へよ
まなごじの 真直なる者 今ここに来ぬ」
ダリが朗々と奏上した呪言に合わせて、手のひらからの光がより強くなる。それはついに真昼のように周囲を照らし出し、あまりの眩しさに京本は両の腕で顔を覆わなくてはいけなくなった。
数秒間、光の奔流が続いたかと思うと、音もなくそれは収束した。周囲が再び闇に包まれたことを察知して京本は顔を覆っていた腕を下ろす。
な・・・!?
先程見た時は、祠の向こう側は確かに山の斜面だったが、目を開けると、そこにはポッカリと穴が開いていた。一体どんな魔法を使ったのか・・・と訝しがる京本の方を一瞥することすらせず、ダリは洞穴へとずんずんと入っていった。
「お・・・ちょ、待てよ!」
京本も慌ててダリを追いかける。洞穴は鍾乳洞のような感じではなく、どちらかと言うと、人工的に掘られた坑道のようであった。坑道と言っても、別に高さや幅が一定であるわけでもなく、あるところはとても歩きやすいが突然、人ひとりが通るのがやっとなくらいの狭さになるところもあったりする。また、悪いことに足元も平らではなく、粗削りの岩が凸凹と突き出し、歩きにくいことこの上ない。しかも下り坂だと来ている。

