この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第67章 危急存亡(ききゅうそんぼう)
「あんた、ここに来たことあるんかい?」
問うてみたが、ダリはそれに答えを返そうとしなかった。無視かよ・・・そう思い、軽く嘆息すると、京本は少し離れたところからダリの挙動を見守ることにする。

とにかく、自分の使命はこの妙な狐男を見続けること・・・
そう考えているようだった。

1分ほど、本殿を見上げると、ダリはその前扉、神社で言えば御神体が安置されているだろう箇所の両開きの戸に手を掛ける。特に鍵はかかっていないらしく、それらはあっさりと開いた。

中はがらんとした木造りの部屋のようであるが、京本を囲む狐火の光も中までは届かないため、そこに何があるかをうかがい知ることはできなかった。特に危険を感じることもなかったので、興味半分でそこに近づいていく。

ダリが本殿の中に入り込んだところで、京本がその扉辺りまでくる。そこまで来ると、狐火の光で部屋の中が薄ぼんやりと照らし出されていく。そこは予想通りの木造りの部屋で、左右には古くて小さな社にありがちな格子の明り取り用の窓がある。古い建物であるようだが、奥側の壁際にあたりに何かがバラバラと散らばっている様子はあるものの、全体的には小綺麗だった。

中央には簡素な祭壇のようなものがあり、三方(注:木で作られた神饌を乗せる台)の上に方形の布がかけられており、その上に勾玉がひとつ置かれている。

勾玉はくすんだ緑色をしており、おそらく翡翠製だろうと思われた。大きさは5センチ弱と言ったところか、珍しいものなのだろうけど、博物館などで見られるような普通の作りだった。

ダリがそっと、その玉に手を伸ばす。取ろうとして一瞬躊躇する。何事かをつぶやき、再び手を伸ばした。ダリが勾玉を掴むと不思議なことに、その玉が色合いを変える。緑の色合いが薄くなり、オレンジ色がかり、しかも光を放ち始めた。よく見ると、全体的には緑色なのだが、その中に黄色っぽい模様がウネウネと蠢くように漂っていた。

「そ・・・それが・・・狙っていたお宝かい?マカルガエシノタマ・・・とかいう」
そのあまりに神秘的な変化に、京本も息を呑んだ。明らかに普通のものではないこれこそが、自分が持ってくるように言われたものだと確信したようだった。
/911ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ