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天狐あやかし秘譚
第67章 危急存亡(ききゅうそんぼう)
「ああ・・・そうだ」
「じゃあ、それを早くよこせ」

京本は左ポケットから金属製の筒を取り出して、無遠慮にその右手をダリに突き出した。その手にある死返玉を渡すように要求したのだ。

「死にたくなければ、受け渡しは後にするべきだな」
その申し出にダリは冷たい言葉を返す。そして、そのまま踵を返し、社の戸口に向けて走り出していった。想定しなかった動きに京本は面食らい、一瞬判断が遅れたが、すぐにその後を追いかけた。

「おい!待て、こら!」

堂から出たところで、ダリが立ち止まっている。そこに追いついてきた京本の目の前に広がる光景は、彼の想像を遥かに超えたものだった。

「ば・・・ばけもん!」

そこに広がっていたのは、左右に並んでいたミイラたちが軋むように立ち上がり、虚ろな目をこちらに向け、ボロボロの服を引きずりながらにじり寄ってくる光景だった。堂はすっかりそのミイラの群れに取り囲まれており、出口まで走って抜けられる隙間はすでになかった。

「なるほどな・・・この堂が玉の力を抑えていた・・・というわけか」
ダリは呟くと、右手を打ち払うような仕草をした。途端、その手の動きに合わせて疾風が巻き上がり、近づいてきたゾンビを押しのけた。

「お・・・や・・・やったか!?」
しかし、疾風はミイラを10メートルほど先まで押しのけただけだった。尻餅をつくように転倒したゾンビたちもすぐに立ち上がり、再びうそうそと密やかな衣擦れの音を立てながら迫ってきていた。

「ひぃ!だ・・・ダメじゃねえかよ!な・・・なあ、あんたつええんだろ?あいつらをぶっ飛ばしてくれよ」
恐怖のためか、震える声で京本は言った。ダリに縋り付くことはかろうじてしなかったが、親の背後に隠れる幼児よろしく、ダリの背後から離れようとしない。

「京本とやら・・・ここから抜け出すぞ・・・あれらはおそらくは、不死だ」
なおもギャーギャーと叫び続ける京本を小脇に抱えると、ダリは出口を目指し跳躍するべく両の足に力を込める。

「き、貴様・・・何を!」
黙っておれ、と言おうとしたその刹那、ダリの背筋に悪寒が走った。何かを明確に知覚したわけではない。長年の戦いの中で得た勘のようなものが働いたのだろう。前に飛ぼうとしていたのをやめ、咄嗟に横に跳ねる。

ドゴン!
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