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天狐あやかし秘譚
第67章 危急存亡(ききゅうそんぼう)
☆☆☆
沙也加との恋人同士の付き合いは、長く続くことはなかった。

9月の文化祭でのことだった。文化祭では、各部や同好会にひとつずつブースが与えられた。多くの場合ブースは教室を二分したもののうちのひとつをあてがわれていた。大きな部やクラス発表には教室が丸ごとひとつ当てられることもあった。

雑文同好会は、小さいので、もちろん、教室の半分だけのスペースを当てられているのみだった。そこに、会員それぞれが『推す』プロの文章を紹介するスペース、それから、雑文同好会の活動の様子を書いた模造紙の発表スペース、そして、同好会誌「ざつぶん」の配布スペースが作られていた。

ブースには、会員が当番制で座ることになっていた。先述した通り、雑文同好会は会員4人、実質3人で活動しているので、結構な長さをブースで過ごすことになる。

なんとなく、公認カップルになっているとは言え、沙也加がついているとき、ベッタリと僕がいるのはためらわれた。彼女がブースに居るとき、僕はふらふらとそのへんを見て回っていた。

これが、いけなかった。

交代でブースに戻ったとき、沙也加のところに、大柄な男性と、その取り巻きと思われる数人の男がいた。大柄な男は沙也加にしきりに言い寄っているようだった。

瞬間、頭にカッと血が昇る。

後先考えずに行動したのは、人生でこれが初めてだった。僕は、その男の手に掴みかかった。頭の中には、暴漢たちをかっこよく追い払う・・・そんなイメージがあったと思う。

しかし、現実は全く違った。
あっという間に黒板に押し付けられ、低い声で脅された。
自分よりも頭ひとつ大きな『男』。その圧倒的な力に為すすべがなかった。

言葉で決定的なことを言われたわけではなかった。
押さえつけられた力で怪我をしたわけではなかった。

その男の背後でニヤつきながら見ている取り巻きたち。
そこで初めて僕は、自分の「無力さ」を痛感した。

「な?出てけよ・・・」

言われ、反論すらできなかった。教室の外にトボトボ歩き出る。ちらっと後ろを振り返ったとき、沙也加が救いを求めるような顔をしていたが、僕には何もすることができなかった。
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