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人外に愛される【短編集】
第2章 カ タ バミ 様
「うっ…ううっ…。」

涼介の体が倒れ込んできて、彼の体重が自分にのしかかる。

鈴は嗚咽を漏らしながら、それでも涼介の背中を抱き締めた。








「涼ちゃん…涼ちゃん……。」

今抱いている体が、耳元で聞こえる荒い息が。

涼介のモノだと信じたい。








『はぁ……鈴……。』

涼介はゆっくりと体を起こした。

鈴は恐る恐る目を開けて涼介を見る。














「ひっ!!」










涼介の肩に、ドス黒い手が置かれていた。

さっきまで聞こえていた、扉を引っ掻く音はもう聞こえていない。








鈴が見た涼介の顔は、両目から血を流していた。

まるで泣いている様に。








「いやああああああー!!涼ちゃん!!」

鈴が叫んで逃げようとすると、その手を涼介が押さえつけた。

ズブズブと、涼介と鈴の手が溶け合っていくのが見えた。








『鈴……もう1つだから……。』








涼介の背中にある黒い影がどんどん大きくなってくる。

それが人の形になった時に、同じ様に赤い目が鈴を睨んだ。


























「いやああああああああああああああああ!!」





















































































「鈴ちゃんが神隠しに遭ったって。」

「一昨日の夜に鈴ちゃんを見た人が居るみたいよ…。」








鈴がいなくなった事で、捜索の中、村人達がヒソヒソと話し合う。




















「それが、1ヶ月前に神隠しに遭った、涼介くんと一緒に森の中に入って行ったって。」







サザっと禁忌の森に風が吹いた。















          
            ー完ー
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