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第2章 旅の始まり

車中に暫し和やかなムードが漂い、悠はリラックして車窓の風景を眺めていた。時折沙織の方をみつめては笑顔を浮かべる。
沙織の気持ちもこの雰囲気に心を和ませられていた。このまま悠との時間が穏やかに過ごすことが彼女にとっても、そして悠にとっても一番幸せなのかもしれないと思っていた。
しかし、沙織の心の奥底には彼女の禁断な欲望が徐々に湧き出していることも、彼女自身が一番よく知っていた。
「どうしよう…」沙織は心の中で呟く。彼に対する特別な感情は、時々抑えきれないほど溢れてくる。そして、ふと思い出すのは、彼女が抱えているもう一つの秘密だった。

「悠、ちょっといい？」沙織は視線を前方の道路に向けたまま、息子に声をかけた。

「うん？何？」悠はスマホから顔を上げ、母親の声に耳を傾けた。

「実は…」沙織は少し躊躇いながらも、心の中に秘めていたことを告白する。「私、タバコを吸ってたの。今まで言ってなかったけど…。それで、今すごく吸いたくなっちゃって。もし、よかったら…タバコを吸ってもいい？」

悠は一瞬驚いたように目を見開いた。「え？ママ、タバコ吸うの？全然知らなかったよ」

沙織はうっすらと笑いながら、頷いた。「そうなの。あんまり人前で吸うことはないんだけど、本当は昔からタバコがやめられなくて、特に緊張するとつい…、少しだけ吸いたくなる時があるの…。」

「ふーん…」悠はしばらく沈黙したまま母親を見つめていたが、その表情が徐々に変わり、少しだけ照れたような笑顔を浮かべた。「きっと、ママがタバコ吸う姿って、昔見た映画の女優さんみたいで素敵かも…。なんか見てみたいな。カッコいいかも…。」

その一言に、沙織は不意に心臓がドキリとした。思いがけない言葉が、胸の奥に温かく響いたのだ。「ありがとう、悠」彼女は微笑みながら、片手でバッグの中からタバコを取り出した……。