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第2章 旅の始まり

車内の空気を少しだけ換気するため、窓を開けると、心地よい風が一瞬のうちに車内に流れ込んできた。沙織はライターでタバコに火をつけ、最初の一口を吸い込んだ。煙がゆっくりと彼女の口元から流れ出し、風と共に車窓の外へと消えていく。

悠はその姿をじっと見つめていた。タバコを吸う母の姿は、彼にとって新鮮で、普段の沙織とは違う魅力を放っていた。確かに、映画で見たカリスマ的な女優のように見えたのだ。彼はその姿に、母親としての沙織だけでなく、一人の女性としての魅力を感じ始めていた。

「本当に素敵だよ、ママ。タバコを吸う姿って、なんだかとても大人っぽくて…ママが別人のように、新鮮な気がする…。」

「そう？」沙織は軽く笑いながら、タバコを吸い続けた。彼の言葉に、心の奥がじんわりと温まるのを感じた。自分が彼にとって、単なる母親の枠を超えた存在として見られていることに、少しだけ胸をときめかせた。

車は高速道路を進み続け、外の景色がさらに変わっていく。山々が連なり、緑の中に差し込む日の光が、時折車内に柔らかく反射していた。沙織の中で静かに高まる感情は、車窓から見える風景と共に、ますます鮮やかになっていった。彼女はタバコを吸いながら、心の中で悠への特別な想いが膨らんでいくのを感じていた。
そして、その想いがどこへ向かうのか、沙織自身にもまだわからないままだった……。