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❤淫欲母子禁忌旅情❤
第1章 プロローグ
十蔵(67歳)の書斎は、時を刻んだ木材の香りと古書特有の匂いが交じり合う、趣深く静謐な空間だった。
柱に掛けられた古時計が午前1時を差している。大正時代から使われていたであろう、その古時計は規則的な振り子のリズムを響かせ、その音色が空間にノスタルジーを漂よわせ、時の積層を際立たせていた。
壁には色あせた掛け軸が掛けられ、床には選び抜かれた骨董品が整然と並べられている。書棚にはぎっしりと書物が詰まっており、この家系が代々紡いできた長い歴史を如実に物語っていた。
十蔵は艶やかな黒檀の文机に向かい、静かに古い書物のページをめくっていた。その書物は、遊女や小町の性行為を題材にした――いわゆる春画だった。彼は春画の収集家であり、特に「責め絵」と呼ばれる独特なジャンルに情熱を注いでいた。その絵に描かれた女性たちの苦悩と甘美が交錯する表情に陶酔し、丹念に眺めながら、一人の時間を堪能していた。
静寂に包まれた書斎に、不意に襖の向こうから悦子(36歳)の落ち着いた声が響いた。
「あなた、お電話です・・・。」
十蔵は驚くこともなく、ゆっくりと顔を上げた。
「こんな時間に? 誰からだ?」
「先生、いえ、沙織(さおり)さんからです。」悦子は少し戸惑いながらも、丁寧に答えた。
十蔵の家は地元に古くから続く名門の豪農の家系で、地域に深く根差した存在だった。現代ではネットやスマホが主流となる中、この家では未だに黒電話が現役で使われている。戦前には広大な田畑や山林を有していたが、戦後の混乱と高度経済成長の波を経て、いまではその象徴ともいえる大きな屋敷だけが残されている…。
柱に掛けられた古時計が午前1時を差している。大正時代から使われていたであろう、その古時計は規則的な振り子のリズムを響かせ、その音色が空間にノスタルジーを漂よわせ、時の積層を際立たせていた。
壁には色あせた掛け軸が掛けられ、床には選び抜かれた骨董品が整然と並べられている。書棚にはぎっしりと書物が詰まっており、この家系が代々紡いできた長い歴史を如実に物語っていた。
十蔵は艶やかな黒檀の文机に向かい、静かに古い書物のページをめくっていた。その書物は、遊女や小町の性行為を題材にした――いわゆる春画だった。彼は春画の収集家であり、特に「責め絵」と呼ばれる独特なジャンルに情熱を注いでいた。その絵に描かれた女性たちの苦悩と甘美が交錯する表情に陶酔し、丹念に眺めながら、一人の時間を堪能していた。
静寂に包まれた書斎に、不意に襖の向こうから悦子(36歳)の落ち着いた声が響いた。
「あなた、お電話です・・・。」
十蔵は驚くこともなく、ゆっくりと顔を上げた。
「こんな時間に? 誰からだ?」
「先生、いえ、沙織(さおり)さんからです。」悦子は少し戸惑いながらも、丁寧に答えた。
十蔵の家は地元に古くから続く名門の豪農の家系で、地域に深く根差した存在だった。現代ではネットやスマホが主流となる中、この家では未だに黒電話が現役で使われている。戦前には広大な田畑や山林を有していたが、戦後の混乱と高度経済成長の波を経て、いまではその象徴ともいえる大きな屋敷だけが残されている…。