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イツキとタマキ 〜本通り商店街〜
第1章 イツキとお絵描き
そうか、生活感が無いのは家具が無くて、壁が見えてるからか
タンスや戸棚などが無くて、段ボールが少し積まれている程度なので、住んでいるようには思えません
むき出しの流し台はありましたが、食器や冷蔵庫、電子レンジなどのものも見当たりません
もしかしたらこの場所を手放す準備をされているのかな? そうなら何か重たい荷物でも運んでちょうだい!という頼み事なのでしょうか?
「そっちじゃないの、こっちに来て」
奥の方でショウコさんが呼んでいます
階段の対面側の部屋に入って、そこにはショウコさんの姿はなく、奥にふすまがあってその奥のようです
なるほどさっきの部屋はキッチン兼リビングで使っていて、こちらがわ2部屋が寝泊まりする部屋だったのかな?
ふすまを抜けて奥の部屋に入ると、そこだけ荷物が色々と置いてありました
壁にいくつもキャンバスが立て掛けられ、中央にはイスとイーゼルがあります
なるほど、ここはショウコさんの創作活動のスペースにされているのか!
ちょいちょい商店街の川沿いで見かけるのは、ここに通うためだったのでしょう
確かに絵を描く趣味のショウコさんが、娘夫婦の家に同居すれば、こういった荷物やスペースは持ち込めないかもしれませんね
立て掛けられたキャンバスのいくつかはリンゴや花瓶などがモチーフの静物画だったり、どこか旅先での風景画のようなものが散見されましたが、ひときわ目を引いたのは今、イーゼルに立てられている描きかけのものでした
それは裸婦像です
ふくよかな女性の裸体を、光と影のコントラスト強めに描かれています
まだ描きかけといった感じで腕や脚だけ単色で塗られているだけでしたが、それ以外はけっこう書き込まれています
肉感的なこの女性、どこかショウコさんに似ている気がします
「あまり見ないで、おばさんの裸なんて、あなたも見たくはないでしょっ!」
ショウコさんは照れながらも、ボクをじいっと見つめていました