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女性のための犯され短編集
第11章 家庭教師先の生徒に犯される

 加えて、この目だ。

 ギラついた目……。すごく、すごく危険な目。

 彼が何故こんな視線を自分に向けてくるのか、まるでわからない。

 わからないけれど…胸の奥が熱くなる。

 とても怖いのに惹きつけられる。

 どうしてそんなふうに……!?

「じ……じゃあ、…さっきの問題を…説明すると」

 逃げるように参考書を開いて目をそらした彼女の声は、みっともないくらい上ずっていた。


 問題の復習を始める。

 それでも彼の視線から逃げられない。


「この問題でPの軌跡を求めるには……」


 ああ……すごい
 真っ直ぐ見られてる


「…与えられた式を…!…放物線か円の式に変形しなきゃいけないから…」


 唇の動きから、まばたきのタイミングまで、全部

 全部

 あの目がずっと見てる

 何も見逃してくれない


「まずは変数を右辺に……っ」


 声が途切れそうになる
 息が止まりそうになる

 まるであの視線に…絡み取られているみたい

 ねっとり、じっくりと、太い蛇が身体を這い回るような錯覚──

 彼女は必死に耐えて、説明を続けた。


 ヂリヂリヂリヂリ

 ジージージージー、ジージージージー


 さらに追い打ちをかけるがごとく、セミの声が頭に響く。

 夏の怠さを凝縮した音の洪水…。

 声を出そうと息を吸うごとに、乾いた喉が焼かれる。


 暑い

 暑い

 熱い


「……ッ─のように変形して……公式……を……」


 ヂリヂリヂリヂリ....


「…は‥‥…はぁ……はぁ……」


 熱い……

 肌に当たる空気も、吸い込む空気も

 いや、それだけじゃない……

 身体の内側──みぞおちの下のほうから、どんどん身体が火照ってくる。

 彼の視線に晒されるだけで、苦しいくらいに熱くなる……。

「……汗」

「…ハァ、ハァ……ッ……ぅ」

「汗が凄いね……センセ」

「………使う…‥公式…は、…‥‥これ、で」

「………」

 彼女は必死だった。

 相手の言葉も聞き取れないくらい上の空だったけれど

 説明を止められなかった──たぶん、止めた途端に彼が取るであろう次の行動を想像して、怯えていたからなんじゃないか。


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