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女性のための犯され短編集
第16章 巫女は鬼に犯される(2)

 巫女は立ち上がり、壊れた錫杖を手に持つが、霊力を集中させる力はもはや残っていない。

 逃げるしかないと後ずさった瞬間、一匹が飛びかかり、鋭い爪が彼女の腕を切り裂いた。

「ううっ…!」

 血が飛び散り、痛みに顔を歪める。

「邪魔な服はひん剥け!丸裸だ!」

 囲まれた彼女に逃げ場はなく、次々と迫る異形たちの手が彼女の巫女服を掴み、引き裂こうとする。絶体絶命の瞬間、彼女は目を閉じ、最後の祈りを口にした。

(神よっ……どうか、どうかお力を)



 その時だった。



「──グオオオッ!」

 轟音と共に、モノノ怪の一匹が吹き飛び、木々に叩きつけられた。

 驚いた巫女が目を開けると、霧の中から白銀の長髪をなびかせた鬼が現れた。黄金の瞳が冷たく光り、その威圧感だけで異形たちが怯んで後退する。

「貴様ら……俺の獲物に手を出すとはいい度胸だな」

 鬼の声は低く、地響きのように森を震わせた。

 一瞬の隙を突いて、彼はモノノ怪に襲いかかった。鋭い爪が空を切り裂き、異形たちの身体を次々と引き裂いていく。血と肉片が飛び散り、断末魔の叫びが森に響き渡った。

 巫女は呆然とその光景を見つめていた。鬼の力は圧倒的で、数瞬のうちに妖怪の群れは全滅していた。

「‥‥ッッ‥」

「──…さて」

 血に濡れた鬼が振り返り、彼女を見下ろす。冷たくもどこか愉しげな笑みがその美麗な口元に浮かんでいた。

「お前……俺から逃げた結果がこれか。随分と無謀だな」

「っ‥‥!」

 巫女は恐怖と悔しさで唇を震わせた。助けられた事実に感謝するどころか、鬼への憎しみが再び燃え上がる。

 しかし、力尽きた身体は動かず、鬼が近づいてくるのをただ見ているしかなかった。


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