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女性のための犯され短編集
第1章 ストーカーに犯される


「あがりましたよ。〇〇さんも、お疲れでしょうからシャワーをどうぞ」


「…な…んで、わたしの下の名前を知って…?」


「当然、知っていますよ」


 気が動転しすぎてわからなかった。

 男は浴室から出てきていて、いつもの穏和な優しい顔でこちらを覗き込んでいた。

「何度も伝えたじゃないですか。俺は君を愛していると」

「‥あ‥あなたが‥‥手紙を‥‥!?」

「それだけじゃないけれどね」

 彼女の顔が青ざめる。

 はめられた。自分はまんまと、ストーカーの罠にはまったのだ。

 震え出した彼女の手からスクラッチファイルが落ちた。

「おっと」

 膝をおって屈んだ男が、それを拾う。

「なかなか上手く撮れているでしょう?ほら、これとか、素敵な笑顔だ」

 中にコレクションされた無数の写真を見せながら、楽しそうに喋る。

「これは先週の夜ですよ。あと俺がいうのも変だが、暗くなったらカーテンを閉めないと危ないですよ。外から丸見えなんですから」

「ぃゃ‥‥!‥‥嫌、こん‥なの‥」

「嫌じゃなくてちゃんと見てください。俺はずっと貴女を見守っていたんだ」

 悪びれもせず盗撮の写真を自慢してくるこの男は、狂っていると感じた。

 逃げないといけない

 すぐにそう思った。

 今すぐ、逃げないと……!

(足が動かない)

 だが彼女の足は震えるばかりで動いてくれなかった。

 人は本当の恐怖にさらされた時、悲鳴をあげることさえできないのだと初めて知った。ヒュウヒュウと下手くそな呼吸が、喉を通る音がする。

「火‥‥」

「……ん?」

「火をつけたのも‥‥貴方‥‥っ‥‥!?」

「ああ、あれは俺じゃありません。でもまぁお陰で君が俺の家に来てくれたんだからすごい偶然だ!きっと神さまが俺たちを結び付けようとしてくれているんだ!そう思うだろう?」

 普段とは明らかに違うテンションで歓喜している男の様子に、理解がまるで追い付かない。


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