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女性のための犯され短編集
第7章 巫女は鬼に犯される
....グラッ
するとどうだろう。
彼女を中心として空間が歪み、天地が一周するような奇怪な現象が辺りをつつんだ。
その中を巫女は歩き出す。
──ここは境界だった。
人の世と、鬼の世が交錯する場所。それは夜中のある時間にだけ、特殊な条件下で現れる。
「──…何者だ?」
「……っ」
巫女が " 境界 " へ足を踏み入れた時、眼前に広がるのはボロボロのあばら家ではなく、美しく荘厳な屋敷であった。
中へ入ろうと踏み出すと、屋敷の中から、地を這うような低い声が投げかけられる。
(なんて強い力…!こんな鬼、これまで対峙したことない)
その威圧の凄まじさに、巫女は少したじろいだ。
(でもおかしいわ。人を喰らうモノノ怪には…それとわかるおぞましい妖気が渦巻いている筈なのに。この鬼からはそういった気配がしない…?)
「……あなたが都を騒がせている人喰い鬼ですか」
凛とした声で巫女が問う。鈴の音が鳴るような…透き通った声だった。
「人喰い鬼?ああ……お前も、俺を退治しにきた類いか」
屋敷の声の主は気だるそうに立ち上がり、ギイッ…と音をたてて戸を開けた。
巫女は息を呑む。
現れたのは目を疑うほどの美しい容姿をした男だった。
白銀の長髪に、漆黒の着物。整った鼻の下で弧を描く口の端には、ギラりと牙が光る。ふたつの黄金色の瞳が暗闇の中で冷たく光っていた。