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女性のための犯され短編集
第8章 幽霊アパートで犯される


『・・・・コイ・・・・コ・・イ』


 人の声とは違う。低く…這いずるような声


『・・オ"・・・テ、・・コ"・ィ・・』

『・・・・・・コイ』

『・・・コイ・・・コ、ィ"・・・』


 すぐに声は自分のまわりを取り囲むように増殖した。金縛り特有の耳鳴りではない。ある明確な感情を伴う言葉だ。

 《 コイ 》

 自分は呼ばれている。どこに?──知るよしもない。

「‥‥ッ‥!!」

 彼女はパニックだった。夢なのか、これは悪夢なのかと疑うが、そうとは思えない生々しい感触が肌にある。

 体温と呼べるような温かさはなかった。

「‥ヴ‥‥ア‥っ‥!‥‥たす‥け‥!」

 助けを求めて叫んでもまるで蚊がなくようだ。首を掴んでいる手の力が強くなって、どんどん苦しくなる。人間ではないナニカが自分を締め殺そうとしている…。

「‥ぃ‥や、ア゛‥‥‥たす‥‥‥け‥‥‥て‥‥‥ッッ」

 凄まじい恐怖で朦朧としてくる意識。尋常ではない汗を滲ませる彼女は、謎の呪縛の中でどうすることもできなかった。



 その時だ


 ピンポーン


 真夜中だというのに、部屋のチャイムが鳴り響いた



「‥ッッ‥‥‥!」

 普段であれば怖い。しかし今は、それ以上の恐怖が彼女を襲っている。

(助けて!誰でもいいから助けて!!)

 ワラにもすがる思いで彼女が玄関へ視線を送ると、なんと今まで動かなかった頭がその方向に動いた。

 動けるようになったのだ。全身を押さえつけていたあの恐ろしい手が、突然いなくなった。

(動ける!!今のうちにっ…!)

 彼女は一心不乱に玄関まで走った。


 ──バタン!!


「うわっ!!」

「……っ」


 勢いよくドアを開けて外に飛び出した彼女とぶつかったのは、下の部屋のお兄さんだった。


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