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禁断の果実
第3章 美術館
「あのペンタッチが好きなのね?」
「うん、あの筆遣いは堪らないね…」
そう言うと響はちょっとはにかむようにして笑うのだった。
「私の父も前澤くんと同じようなペンタッチで絵を描くのよ…」
「え?親父さんも絵を描くのか?」
響はちょっと驚いている様だった。
「そうなの、私の父も某高校で美術の教師をしているのよ…」
「そうなのか?」
「ええ、そうよ…」
「親子で美術教師してるんだ?」
「そうね、そうなるわね…」
「よっぽど美術が好きなんだな?」
そう言うと響は笑ったのだった。
このほんの少しの会話で響はちょっとだけ緊張が解けていく様だった。
でも、少し時間が経つと暗い顔をするのが見えた。
そんな様子を見て私は少し心配になった。
「前澤くん、何か悩み事でもあるの?」
「え?」
響はそう言うと黙ってしまう。
「良ければ話してくれないかな?」
「話したってどーにもならないよ…」
響はちょっとふてくされた様にそう言うのだった。