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禁断の果実
第3章 美術館
「話だけでもしてみて、少しは気持ちが軽くなるかも知れないし、私も一緒に考えるわ…」
響は尚もテーブルに置いてある珈琲カップを見つめている。
そして、そのカップを見つめながらポツリとこう言ってきたのだ。
「俺さ、将来は画家になりたいんだ…」
「画家に?」
「うん、そうさ…」
「素敵じゃない?いいと思うわ…」
そう言いながらも響の顔は暗いままだった。
「でもさ、親父もさ、お袋もそれを許してくれないんだよな…」
そう言うと珈琲を一口飲んだ。
響の父親は医者であることを私はこの時思い出していた。
「何故、許してくれないの?」
「画家になんかなっても食っていけないだろう、って言うんだ…」
「確かに、売れるまでは大変だと思うわ…」
「それだけじゃないんだ…」
私は珈琲を口に運び一口飲んだ。
続けて響はこう言う。
「俺の親父って、医者なんだよ…」
「そうだったのね…」
私は初めてその事実を知ったフリをして見せた。
すると、響は尚もこう言う。
「それで、親父は俺に今ある病院を継げって言うんだ…」