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禁断の果実
第3章 美術館
「それは、前澤くんの希望する事じゃないのよね?」
「うん、俺は将来美大に通いたいんだ…」
「でも、お父さんとお母さんはそれに反対なのね?」
「そうだよ…」
そう言うと響はまた珈琲を一口飲んだ。
続けてこう話す。
「俺は、もう親父やお袋から、医者になれ!!医学部に行け!!って話は聞きたくないんだ…」
私はこの悲鳴にも似た言葉に返す言葉が見つからなかった。
そして、私はこう思ったのだ。
前高校でのトラブルも自分の母親と同じ年齢であったであろう里香の母親と寝たのもこんな家庭環境が導いたものではないか。
そんな感じに私には思えてならなかった。
この少年は今、とても孤独で誰からも受け容れてもらえないのだと感じたのだ。
そこで、私は響にこう言ったのだ。
「前澤くん、私はあなたが美大に行って画家になることを応援するわ…」
「え?」
響はちょっと驚いている様に見えた。
響は続けてこういった。
「でも、親父もお袋も反対してるんだぜ?」
「私からも何とか説得してみるわ…」
何の変哲もない一介の美術教師が医者である響の両親を説得するなど無理に思えた。
でも、私は響の願いを叶えてやりたいと思ったのだ。
私は暗い気分を変えてこういった。