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禁断の果実
第8章 告白
でも、私の気持ちに反して響はそんな素振りは見せなかった。
私は先日のことは嘘だったのではないかと感じていたのだ。
響は部室の椅子に腰かけるとこう言ってきた。
「先生さ、今日はゴッホの話しがしたくてさ…」
そう言うと響はとても嬉しそうだった。
私はそれに合わせるようにキスの事には触れずに話し始める。
「そうね、ゴッホの話しはいいわね…」
「俺、ゴッホはさ、ひまわりだけじゃなくて、他の絵も好きなんだよな…」
「星月夜とかかな?」
「そうだね、あの月の黄色や夜を描いた青の色が俺は好きだな…」
星月夜は、ゴッホの代表作のひとつだ。
1889年6月、フランスサン=レミ=ド=プロヴァンスのサン=ポール・ド・モゾール修道院の精神病院で療養中に描かれたものだ。
現在、ニューヨーク近代美術館の永久コレクションとされている。
星月夜の絵の特徴としては、勢いのある渦巻く雲、星月の光の強さ、糸杉の存在の大きさを表す様な激しい筆致が特徴だ。
構図としては、浮世絵の構成を用いた奥行を感じさせる描き方で、画家が眼の前の風景を眺めているのではなく、その風景の中に包み込まれている様な感じの描き方と言える。
「星月夜は最高にいいよ…」
「そうね、私も好きな絵だわ…」
「俺も、あんな絵が描きたいよ…」
「描き続けて行けばいつか前澤くんらしい星月夜が描けると思うわ…」