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雨が好き
第54章 ひとりじめ
本当に、そんなことなかった。
水際さんの蒼人さんに向けている、向けてきた気持ちは、
とってもきれいだっていうことを、私は知ってるから。

私の言葉がふわりと秋風に流れて消えるころ、

「ありがとう」

随分時間をあけて、水際さんから返事があった。

水際さんは黙っていた。
私も何も言わなかった。

じっと黙っているけど、
いっぱいおしゃべりしている時に負けないくらい、
たくさん心が行ったり来たりしている、
そんな不思議な沈黙だった。

「あのさ・・・」

ずいぶん長くそうした後、
水際さんが私の方を見た。

そして、若干ためらってから、
「今晩、時間ある?」と聞いてきた。

唇を少しだけ噛んで、視線を外して、
そして、何かを決意したみたいな言い方。

私は、頷くことしか、
できなかった。
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