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雨が好き
第56章 星月夜
いてくれたのが分かったのは、
お父さんが、歌を歌ってくれたからだ。
扉越しに聞こえた歌。
その時々で違うけど、
いつも、いつも優しいメロディだった・・・

扉のこちらがわで、
私もそっと口ずさんでいた。

1週間くらいだっただろうか、そんなふうにしていて、
きっかけは忘れたけれど、あるとき、やっと、私は外に出られた。

長い事お風呂に入ってなかった私を
恵美子おばさんがお風呂に入れてくれて、
頭を洗ってくれた。

それからは、やっぱり学校にいかれなくて、
毎日、ご飯を少し食べて、ぼんやりして、
眠って、起きて・・・そんな生活。

夜、寝られないときもあって、
そういうときは、お父さんが枕元でまた歌ってくれた。

・・・そうだ、
私は、いっぱい優しくしてもらった。

そして、そんなことを思い出していたら、
いつの間にか、私も歌を・・・歌っていた。

いつか、蒼人さんが弾いてくれたギターに合わせて歌った歌。

恋人に歌う、夏の景色を想う歌。
季節外れかもしれないけど、
好きな歌だったから。

口からメロディが流れ出す。
そっと、水際さんの額に手を触れた。
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