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第61章 日帰り温泉

他愛のない、お話。
互いに湯上がりで、ほんのり蒸気をまとっていて、
いつもより温かくて、いい匂いがする。

だから、もっと、近づきたくなってしまって。
私は、バレないように、お尻を少し、近づけてしまう。

とん、と頭が押された。
蒼人さんの方に。

不意を突かれた私は、そのまま蒼人さんの方にもたれかかるようになってしまう。

え？

慌てて身体を離そうとするけれど、押さえられる。
「そのままで・・・」
ここでやっと、私の頭を押したのが、蒼人さんの手だということに気づいた。

そのままで・・・という言葉で、体の力が抜けた。
体重を、彼に預ける。

蒼人さんの肌のぬくもりが、頬を通して身体に入り込んでくる。
鼻腔をくすぐる良い匂い。
多分、石鹸の匂い、蒼人さんの匂い。

「このままで？」
「ええ・・・そのまま、そのまま」

蒼人さんが、囁くように言ってくれる。

いいお風呂に入って、好きな人にもたれて、
温かい場所で、ゆったりする。
こんなにもいい時間が、私のところにくるなんて。

この時が、少しでも長く続けばいいのに、と、
そう願わずにはいられなかった。