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雨が好き
第64章 桜

水際はもう中学生だ。
受験が終わったら、受験勉強のため、という理由もなくなる。
断る、理由なんてない。
僕は、じっと押し黙ってしまう。
もちろん、いやじゃない。
でも、不思議でしょうがなかった。
なんで僕なのか、と。
でも、黙って俯いていたのを、笹屋先輩は大層ポジティブに受け取ったようだった。
「期待して、いいかな?」
ドキリとした。少し迷って、頷こうとしたとき「高槻くん」と名前を呼ばれた。
思わず、顔を上げる。
瞬間
自然にすれ違うように、彼女の唇が、僕の唇をかすめた。
ほんの、一瞬の出来事。
桜の花吹雪に紛れた、幻のようだった。
ぼんやりと立ち尽くす僕の横を通り抜けて、先輩が校門の方に向かって歩いていく。
やっと我に返ったときには、笹屋先輩は、だいぶ遠くに行っていた。
向こうを向いて歩きながら、大きく卒業証書の入った筒を掲げる。
「待ってるから!大学で!!」
僕はまだ熱い唇を指でなぞって、彼女の背中をぼんやりと見送っていた。
受験が終わったら、受験勉強のため、という理由もなくなる。
断る、理由なんてない。
僕は、じっと押し黙ってしまう。
もちろん、いやじゃない。
でも、不思議でしょうがなかった。
なんで僕なのか、と。
でも、黙って俯いていたのを、笹屋先輩は大層ポジティブに受け取ったようだった。
「期待して、いいかな?」
ドキリとした。少し迷って、頷こうとしたとき「高槻くん」と名前を呼ばれた。
思わず、顔を上げる。
瞬間
自然にすれ違うように、彼女の唇が、僕の唇をかすめた。
ほんの、一瞬の出来事。
桜の花吹雪に紛れた、幻のようだった。
ぼんやりと立ち尽くす僕の横を通り抜けて、先輩が校門の方に向かって歩いていく。
やっと我に返ったときには、笹屋先輩は、だいぶ遠くに行っていた。
向こうを向いて歩きながら、大きく卒業証書の入った筒を掲げる。
「待ってるから!大学で!!」
僕はまだ熱い唇を指でなぞって、彼女の背中をぼんやりと見送っていた。

