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雨が好き
第65章 山茶花

「大学に入って、僕の方から先輩に連絡をしたんです」
再会した二人はすぐに付き合うようになった、という。
ただ、付き合うと言っても週末に遊びに行ったり、大学の図書館や互いの部屋で一緒に勉強をしたり、という感じだった・・・らしい。
「高校生みたいなお付き合いでした」
こうして1年があっという間に過ぎていく。
蒼人はさんは、その間のことはあまり詳しくは話してはくれなかった。
私も、聞かなかった。
二人の生活は順調に進む、と思ったある日。
「父が肺炎にかかってあっさりと亡くなってしまったんです」
当時、一家の大黒柱を突然失った蒼人さんの家は、悲しみと混乱に包まれたという。
「水際はだいぶ参っていた。
僕も、そんな水際や母を見て、どうしていいかわからなかった」
そんなとき、蒼人さんの心の支えになったのが、栞さんだったという。
「泣くことこそありませんでしたが、栞が黙って傍にいてくれたことで、僕は一番つらい時期を乗り越えることが出来た、そう思っています」
並んで座ったベンチ
彼は前を、私はそんな彼の横顔を見ている。
彼は、目の前の景色ではない、どこか、遠くの時間を見つめていた。
栞、と呼んでいることに、
多分、気づいていない。
再会した二人はすぐに付き合うようになった、という。
ただ、付き合うと言っても週末に遊びに行ったり、大学の図書館や互いの部屋で一緒に勉強をしたり、という感じだった・・・らしい。
「高校生みたいなお付き合いでした」
こうして1年があっという間に過ぎていく。
蒼人はさんは、その間のことはあまり詳しくは話してはくれなかった。
私も、聞かなかった。
二人の生活は順調に進む、と思ったある日。
「父が肺炎にかかってあっさりと亡くなってしまったんです」
当時、一家の大黒柱を突然失った蒼人さんの家は、悲しみと混乱に包まれたという。
「水際はだいぶ参っていた。
僕も、そんな水際や母を見て、どうしていいかわからなかった」
そんなとき、蒼人さんの心の支えになったのが、栞さんだったという。
「泣くことこそありませんでしたが、栞が黙って傍にいてくれたことで、僕は一番つらい時期を乗り越えることが出来た、そう思っています」
並んで座ったベンチ
彼は前を、私はそんな彼の横顔を見ている。
彼は、目の前の景色ではない、どこか、遠くの時間を見つめていた。
栞、と呼んでいることに、
多分、気づいていない。

