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雨が好き
第82章 ふたつの内緒
【ふたつの内緒】

ど・・・どうかな・・・?

『みなと町』のいつものカウンター席。
蒼人さんが、いつものよりも大振りなコーヒーカップを手に取る。

口元に近づけて、目を閉じて、そっと香りを吸い込む。
少しだけ口を開いて、ふわっとしたホイップののった、琥珀色の液体を口に含む。

一口・・・二口・・・

こくりと、喉が動いた。

私はその様子を固唾をのんで見守っていた。

しばらく経って、もう一口、蒼人さんがコーヒーを飲んだ。
目を開いて、私の方を見る。

うーん・・・

少し、難しい顔をした。

「や・・・やっぱり・・・ダメ?」

恐る恐る聞くと、彼は小さく首を振った。

「う・・・ん。ダメってわけじゃないけど・・・」
じゃないけど?

少し考える素振りを見せる。どう表現するか、言葉を選んでいるのかな?
そう思うとドキドキする。

多分、蒼人さんのことだから、美味しくない、ってはっきり言うことはしないと思う。
でも、嘘をつく人ではないから・・・きっと・・・
困っている?

「お兄ちゃん、何、難しい顔してんのよ!これ、めっちゃ美味しいじゃん!」
水際さんがその横でこくこく同じコーヒーを飲んでいる。
彼女は別の意味で嘘をつかない。

だから、きっと、本当に美味しいと思っている。
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