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第93章 悩みごと

「少し、こうしていて、いいですか？」

言われて、私は素直に頷いた。

やっぱり・・・

「あの・・・ね、
　蒼人さん・・・」

少し、息を吸う。
ありたけの勇気をぎゅっと、込める。

「私・・・蒼人さんの恋人に
　ちゃんとなれるように
　頑張るから」

それでも、出てきたのは
こんな、言葉だった。

一瞬、蒼人さんはきょとんとした顔をした。

なんだか、私は
「頑張る」と言ったのに、
突然に、ぽんと広くて暗い海に放り出されたような
そんな不安を覚えてしまった。

でも、頑張らなきゃいけない。
ひとりで・・・
だって、これは私の『こと』だから

ぎゅっと力を込めた私の手が震えていたのか
ブレンドコーヒーの黒色の海に
小さな波紋が広がった。

重なった蒼人さんの手が
少しだけ力を強める

顔を上げると、
蒼人さんが目を細めて、
少し、困ったように微笑んでいた

「それ、二人で頑張れませんか？」

繋がった手の震えが
いつしか、止まっていた。