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雨が好き
第96章 心の風景
お父さんが声をかけてくれたおかげで、
お客さんをお待たせしてしまうことはなかった。

でも、お会計を済ませると、
やっぱり、私の思考はすぐに、
窓の外の春の夕暮れの中に溶け出していく。

ふと、思いついて、お父さんに聞いてみた。

「お父さん」
「ん?なんだい?」

キッチンで新聞を広げていたお父さんがこちらに顔を向ける。

「お父さんってさ・・・お母さんと海に行ったりしたって言ってたでしょ?」
「ん・・・ああ・・・」
「お母さんがさ、お父さんを誘ったことって・・・あった?」

少し考えたような顔をしてから、お父さんは、

「もちろんあるよ」

と言った。

映画に行きたいと言ったり、旅行に行こうと言ったり、といくつか数え上げる。

やっぱり、そうなんだ・・・。

それを聞いて、ますます私は考え込んでしまった。

「ん?どうしたんだい?」
なんだか、心配させてしまっているみたい。
私は慌てて首を振る。
「ううん・・・なんでもないの・・・ただ・・・」
「ただ?」

・・・ただ・・・

「あ・・・あのさ・・・
 お母さんが最初にお父さんをお誘いしたのって・・・何だったか、覚えている?」
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